研究課題/領域番号 |
20K08347
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 桂子 北海道大学, 大学病院, 助教 (60791952)
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研究分担者 |
大西 俊介 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (10443475)
山本 幸司 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (70608322)
和泉 自泰 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70622166)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 羊膜MSC / 炎症性サイトカイン / IkB-NF-kB / 新規抗炎症因子 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞は、出産時に廃棄される羊膜にも存在していることが知られており、次世代の再生医療材料として期待されている。申請者らは、ヒト卵膜から短期 間で簡便に間葉系幹細胞 を分離培養する技術を確立し、腸炎、肝炎、膵炎などの複数の炎症性疾患動物モデルに対して、細胞ならびにその培養上清を投与した ところ、いずれも高い治療効果を発揮することを明らかにしてきた。本研究では、羊膜由来間葉系幹細胞のもつ新規抗炎症因子の同定を行い、難治性として知られる炎症性腸疾患における新規治療効果の検討を探索することを目的としている。そこで本研究では、羊膜MSC由来新規物質の抗炎症効果の検証するために培養細胞を用いて検証を行った。具体的には以下の通り実施した。 マウス由来マクロファージを用いて、LPSで刺激後、羊膜MSC由来新規物質を処理し、LPS刺激後に産生される複数の炎症性サイトカインをELISA法で検証した。結果、LPS刺激後のマクロファージに羊膜MSC由来新規物質処理するとTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインの発現が著しく低下したほか、培養上清中の炎症性サイトカインの産生も低下していた。さらに、ウエスタンブロット法を用いて、炎症性サイトカインの産生に重要な転写因子であるNF-kBやIkBなどの活性化を確認した。結果、LPS刺激後のマクロファージではNF-kBやIkBなどの活性化が確認されたが、羊膜MSC由来新規物質を処理するとこれら転写因子の活性化が抑制されていることが明らかとなった。これらのことから、in vitroの系を用いた細胞培養実験において羊膜MSC由来新規物質の抗炎症効果が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りにin vitroの細胞実験において羊膜由来新規抗炎症因子の抗炎症効果が明らかとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で羊膜MSC由来新規物質をLPS刺激後の細胞に投与すると、炎症性サイトカインの発現ならびにそれら遺伝子の発現誘導に重要な転写因子の活性化を抑制することが明らかになったことで、次年度は、炎症性腸疾患動物モデルを用いて羊膜MSC由来新規物質の治療効果の検討を行う。具体的には以下の通り実施予定である。 6週齢のマウスを用いてミネラルウォーターにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を自由飲水させ、腸炎モデルを作成する。この腸炎マウスモデルを用いて、羊膜MSC由来新規物質をマウスに投与し、治療効果を評価する。特に腸炎マウスモデルでは、DSS投与後に著しい体重減少ならびに血便が観察されるため、体重変化、便の性状、血便を連日観察するほか、羊膜MSC由来新規抗炎症因子の副作用の有無について連日観察する。その後、マウスを処置し、腸の長さおよび病理学的検討により炎症性評価を実施する。また、腸管組織に対する免疫染色を行い、炎症性細胞浸潤の程度を評価する。さらに、腸組織からRNA抽出を行い、TNF-αやIFN-γなどの複数の炎症性サイトカインの発現について定量的PCR法を用いて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナウイルスの影響で納品に遅れが生じたため (使用計画)炎症性腸疾患動物モデルを用いた羊膜MSC由来新規物質の治療効果の検討を行うための消耗品に使用予定である。
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