研究実績の概要 |
グレリンは、グレリン受容体 (GHSR1a)を介して成長ホルモン分泌刺激、迷走神経刺激、食欲亢進、抗炎症などの作用を示す。SIRT1はヒストン蛋白やp53,p65などの非ヒストン蛋白を脱アセチル化し、寿命延長や抗炎症作用をもたらす。最近、申請者らは、グレリンが細胞内SIRT1蛋白量/活性を上昇させることを報告した。本研究は、グレリンによるSIRT1活性化の機序とその生物学的意義を明らかにすることを目的とした。さらに、ミトコンドリアに局在するSIRT3ついても同様の検討を行った。方法は、GHSR1a安定発現HEK293細胞(GHSR1a-HEK293)およびmock HEK293、GHSR1aを有しないC2C12細胞を用い、qRT-PCRおよびウェスタンブロットで確認した。
SIRT1mRNAは、グレリン(100nM)添加6時間後に一過性に増加し、細胞内SIRT1蛋白量は24時間後に有意に増加した。SIRT3 mRNAは、グレリン添加6時間後に一過性に減少したのち24時間以降に有意に増加、細胞内SIRT3蛋白量は24時間後に増加する傾向を示した。以上の変化は、mock HEK293細胞およびC2C12細胞においては観察されなかった。SIRT3の転写を誘導するPGC-1α のmRNAは、グレリン添加6時間後に著明に減少し、24時間以降に有意に増加した。
SIRT1/3の基質蛋白であるp53のアセチル化状態を、アセチル化p53(K382)特異抗体を用いて評価した。グレリン添加24時間後、GHSR1a-HEK293のアセチル化p53は有意に増加したが、ミトコンドリア分離キットを用いてミトコンドリア局在p53のアセチル化状態を評価したところ、ミトコンドリア画分のアセチル化p53は著明に減少した。
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