①MDA5KOマウスと野生型マウスをCDAHFD飼料で12週間飼育し、NASHモデルを作成した。肝組織を採取し、組織学的に肝脂肪化と炎症細胞浸潤を評価したが、両群に明らかな差は認められなかった。CDAHFD12週時点での組織像は、昨年度解析した6週時点での組織学的所見とほぼ類似しており、高度な線維化まではきたしていなかったため、NASH病態におけるMDA5の意義を明らかにするためには、さらに長期での解析が必要と考えられた。 ②NAFLD患者の肝生検組織を用いて、RIG-Iの発現を免疫染色にて確認した。MDA5は主に非実質細胞に発現していたのに対し、RIG-I発現は肝実質細胞にも認められた。しかし、肝細胞におけるRIG-I発現のパターンは症例によってさまざまであり、一定の傾向はみられなかった。一方、非実質細胞における発現は、NAFL症例にはほとんど認められなかったのに対し、NASH症例では強発現していた。そのため、非実質細胞におけるRIG-I発現は、NASHとNAFLとを区別する重要な所見である可能性が示唆された。また、RIG-I陽性細胞について、モデルマウスの肝組織を用いて蛍光免疫染色にて検討したところ、RIG-IはF4/80と共発現しており、RIG-Iを発現している細胞はマクロファージ系細胞であることが想定された。
NASHの病態において、肝内に浸潤しているマクロファージはRIG-I様受容体を発現していることが明らかになった。NASHの病態進展とともに肝内に遊走する単球由来マクロファージは、NASHの炎症と線維化に関与していると考えられている。RIG-I様受容体であるRIG-IとMDA5はいずれも、このマクロファージの活性化に関与している可能性があると考えられた。
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