研究課題/領域番号 |
20K08350
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐々木 悠 山形大学, 医学部, 講師 (60466620)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 大腸がん / 肥満 / メタボリックシンドローム / インスリン抵抗性 / GIP / HuR / RNA転写後調節 / RNAシークエンス |
研究実績の概要 |
肥満、メタボリックシンドローム(MS)の増加により日本のみならず世界的に大腸がんが増え続けています。この肥満、MSの病態の中心にはインスリン抵抗性やアディポサイトカイン分泌異常、慢性低炎症状態があるとされ、これらが大腸がんのリスクを高めると考えられています。しかし、このような変調が、どのようにして大腸発がんを導くのか、その詳細な分子機序は不明な点が多いのが現状です。 最近、RNA転写後制御に関わるRNA結合蛋白であるHuRの機能異常が肥満やMSの病態と関連することが報告されました。このHuRは細胞のエネルギーセンサーとして重要なAMPKにより制御を受けております。また大腸がんではHuR機能異常があるとした報告もあります。これらのことからHuRによるRNA転写後調節が肥満やMSに伴う大腸がんの発育進展機序に重要な役割を果たしているのではないかと考えました。 そこで本研究では大腸がん組織、細胞株、動物モデルを用いて、肥満大腸発がんにおけるHuRの機能変化とその標的となるmRNAを同定し、それが大腸発がんに対してどのような影響を与えるのかを詳しく調べます。これにより大腸がんの新しい診断や治療戦略を創出することを目指しています。 昨年度は大腸がんをインスリンで刺激するとHuRの細胞質内移行が助長されることを見出し、この条件下でHuRに結合するmRNA群をRNAシークエンスで網羅的に解析し、2倍以上の結合変化があるmRNAを39種同定しました。本年度は、このうち最も変化のあったmRNAの安定性が実際に50%程度低下していることを明らかにしました。このmRNAの機能は不明であったため、CRISPER/Cas9を用いてノックアウトマウス(KO)を作成しています。現在、F1マウスを交配中で、今後、ホモ、ヘテロKOが得られれば、その機能解析を行う予定です。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおりの解析を進め新しい標的遺伝子を同定した。現在、その機能解析を行うためにノックアウトマウスを作成中であり、計画通りにおおむね研究は順調に進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
標的遺伝子のノックアウトマウスを用いて、高脂肪食や大腸発がんモデルにおいて、大腸の腫瘍発生にどのような影響があるかを明らかにします。また残りの38個の候補遺伝子について、肥満、MS環境下における大腸発がん機序へどのように関与するかを検証します。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイス感染の蔓延に伴い学会がWeb発表主体となっており、当初予定していたものより旅費が抑えられました。一方で、研究が順調に進み、ノックアウトマウス作成用の経費が増えました。総じて、次年度使用が生じてしまいましたが、次年度の研究の遂行のため使用させていただきます。
|