研究課題/領域番号 |
20K08355
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
玉田 宏美 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (60712817)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 迷走神経背側核 / 小腸 |
研究実績の概要 |
本年度は、マウス小腸の中枢からの外来性神経支配について形態学的に明らかにすることを目指した。マウスを麻酔下で、食道に併走する迷走神経を切断し、その断端に脂溶性トレーサーであるDiIの結晶を留置し、1週間後にサンプリング、あるいは、灌流固定後にシャーレ内に食道から小腸までを取り出した後に迷走神経断端にDiIを留置する、固定後標本中での標識などを試みた。しかしながら、いずれもマウス迷走神経の断端が極度に細いことなどから、良好な結果を得ることができなかった。そこで、マウス延髄の迷走神経背側核に細胞膜移行型の緑色蛍光タンパク(palGFP)を発現させるウイルスを注入することにより、投射先を蛍光標識する実験を試みている。マウスを脳定位装置に装着後、第4脳室および閂(Obex)の位置を確認後、迷走神経背側核の深さへのインジェクションを行ったが、マウスの迷走神経背側核の範囲が非常に狭いことや、アプローチが困難なことから、未だ小腸への明確な神経投射を確認するに至っていないが、コントロールとして既に迷走神経支配が明らかな胃などと併せて条件の検討と手技の確立を目指している。 また、研究対象である小腸における神経と神経以外の細胞とのインタラクション、つまりグリア細胞やマクロファージなどの免疫系細胞とのインタラクションについても検討を行っている。とくに外来性神経線維の出入り口である腸間膜マクロファージについて解析を進めた結果、膜全体に分布する多極性のマクロファージは、代表的なマクロファージマーカーであるCD206陽性であるのに加え、比較的珍しいLYVE-1も発現しており、その発現は損傷に応答して変化することなどを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既に報告のあるラットでの実験を参考にし検討していた当初の手法が、小型のマウスでは同様に再現することが困難であり、迷走神経へのインジェクションに変更したため。また、変更後の手法も、迷走神経核へのアプローチが技術的な面で難しく、条件検討、手技の定着に計画より時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の手技が安定した後、速やかに電顕解析、生理学的実験に移行することができると予定している。特に、現在採用しているウイルスを用いたトレースにより、今後の光-電子相関顕微鏡観察法(Correlative Light-Electron Microscopy: CLEM法)を視野に入れた電顕解析にも最適なものとなり得ると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験関連の消耗品の業者による品薄などにより、物品の購入に変更があったため。また全ての学会がWeb開催になったため、旅費が発生しなかったため。翌年度では、消耗品の調達にあわせ、共同利用機器の使用料、共同研究が可能になった際の旅費を含めた使用計画を立てている。
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