本年度は、FIB/SEMで得られた消化管内神経線維の三次元微細構造解析を、特に研究課題であるSIP Syncytiumを構成する細胞であるICCとPDGFRα陽性細胞に注目して行った。その結果、両者が神経束の近傍に位置する画像データの取得が可能となり、三次元形態解析により、一つの神経線維がICCとPDGFRα陽性細胞の両者にコンタクトしていることを示唆する所見や、ICCとPDGFRα陽性細胞同士のコンタクト、および神経線維のそれぞれの細胞へのコンタクト様式の違いなどについて三次元微細構造レベルで理解することができた。これらの形態所見をさらに定量評価などに結び付け、これまでに報告されている機能実験との相関を見出すとともに、未だ説明がなされていない機能の解明につなげる。 特に、本研究課題では、いかにフラットな状態を維持しながら消化管組織をFIB/SEM用サンプルとして作成できるかが、重要なポイントであった。そこで、シリコン板に短い針で組織を張り付け、そのままの状態で包埋の直前まで進めるなどの種々の試作を行い、改善につなげることができた。 さらに、並行して進めている、迷走神経線維の出入り口である腸間膜に存在するマクロファージなどの免疫系細胞とPDGFRα陽性細胞との関連について、免疫細胞に発現する受容体をブロックすることで、PDGFRα陽性細胞の活性化を促進することを明らかにした他、本研究課題の解析法の主軸であるFIB/SEMを利用した神経細胞の解析について、原著論文として発表した。
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