研究課題
マウスを使用した基礎的研究に関しては本年も着手できていないが、臨床研究に関してはクローン病症例に対して定期的なCT enterography(CTE)を実施しており、臨床症状、血液・血液生化学所見や治療内容および臨床経過の情報をさらに集積している。特にCT enterographyで腸管全層性の炎症の改善(全層性治癒)を認めた場合の長期予後解析を行ったところ、全層性治癒を認めた場合は再燃率が低い結果が得られており、論文化にむけて準備を進めている。現在、あらたな治療薬が次々と使用可能となっており、多くのクローン病症例が寛解(症状が落ち着いた状態)を達成できているが、クローン病に多い小腸病変は症状や血液検査では判定が難しいため、無症状の症例でも狭窄が進行している場合がある。小腸は大腸と比較して管腔が狭いため、将来の手術を回避するためには定期的な検査が必要であり、CTEの適切な施行タイミングに関しても検討を進めている。また、外科手術前に積極的にCTEを行うことで、手術前に正確な病態評価が可能となっており外科の先生方もCTE所見をもとに手術術式を検討するようになっている。得られた病理標本から、腸管線維化の度合いが判定可能であるため、CTE所見と手術標本とを比較して、CTEにおける線維化した腸管の所見について検討しており、今後はクローン病症例における狭窄が線維化によるものか、炎症に伴う浮腫によるものかをCTEで判定できるようになれば、手術が必要となる症例も減少すると期待される。
3: やや遅れている
マウスの実験系について立ち上げが遅延しており、現在、臨床研究を中心に研究を行っている。
今後も臨床研究を中心に検討を進めて行く予定であり、炎症のマーカーとしてはCRPだけでなく、近年測定可能になったLRGに関しても内視鏡所見およびCT enterographyと比較検討を行う予定である。当院ではCT enterographyを導入して15年経過するため、長期予後に関する十分な情報を集積できると考えてい る。クローン病患者さんの長期予後改善のために、様々な視点から検討を行っていきたいと考えている。
新型コロナ感染症の影響にて、学会活動が制限されており、基礎研究にも着手できなかったため、次年度使用額が生じた。新型コロナ感染症に伴う制限も少なくなったため、積極的に学会における研究結果の公表を行うことで旅費・学会参加費として使用し、基礎研究も進めていき消耗品等に使用する。
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胃と腸
巻: 58 ページ: 1483-1489