研究課題/領域番号 |
20K08362
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
北川 美香 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80588632)
|
研究分担者 |
志村 貴也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (90405192)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 大腸癌 / 尿 / バイオマーカー / circRNA |
研究実績の概要 |
本研究は、新規のノンコーディングRNAである環状RNA(circRNA)が体液中に安定的に発現することに着目し、大腸癌を早期診断するための尿中circRNAバイオマーカーの開発を目指した世界初の研究である。研究当初、尿検体からcircRNA安定的に回収し、測定することに障壁があり、数多くの予備実験を行うことにより、含有量の少ない尿中環状RNA(circRNA)の抽出および発現解析における最適な条件を設定した。 年齢と性別をマッチさせた、健常者16例およびステージ0/I大腸癌患者16例の尿中からRNAを抽出し、circRNAマイクロアレイによる網羅的解析を施行した結果、健常者群と比較し、早期大腸癌患者群の尿中で有意に高発現を示す541のcircRNA、低発現を示す35のcircRNAを同定した。それらのバイオマーカー候補circRNAのなかから、データベースサーチを行い、大腸癌の早期診断への有用性を示唆する33種類のcircRNAを抽出しプライマーの設計を行った。それらプライマーを用い、まずは、網羅的解析に使用した32例のコホートを用いた予備実験を行い、各circRNAの尿中発現を定量PCRを用いて解析し、早期大腸癌での異常発現をきたすcircRNAを複数抽出した。 さらに、220例のトレーニングコホートを用いて、それらの尿中circRNAの発現解析を行ったところ、健常者と比較し大腸癌患者の尿中において、再現性をもって有意に異常発現をきたす尿中circRNAを同定ている。現在、さらなる再現性のチェックのために、最終解析をおこなっているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
尿中のcircRNAの発現量が少ないことから、その抽出や最適な発現解析の条件設定に多くの時間と労力を要したため、研究本体の進捗に遅れを生じた。しかしながら、予備実験による条件設定をしっかりと時間をかけておこなったことにより、再現性のたもなった尿中circRNAバイオマーカーの同定に成功することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在同定している尿中circRNAバイオマーカーの再現性を独立コホートを用いて、さらに検討する。また、大腸癌診断に有用なより多くのcircRNAを同定するために、網羅的解析により抽出されている別のバイオマーカー候補circRNAを解析し、さらに高精度の大腸癌早期診断バイオマーカーパネルの樹立をめざす。 最終的に、大腸癌に対する高診断能の尿中circバイオマーカーパネルが樹立できた際には、本発明知財の特許出願を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
働き方改革の進むなか、育児と研究の両立に際し、研究の進捗に遅れを生じたため、研究期間を延長した。前述のごとく、樹立した尿中circRNAバイオマーカーのさらなる再現性の検証と、追加のcircRNAバイオマーカーの同定を行うため、前年度未使用予算を執行する予定である。
|