研究課題/領域番号 |
20K08369
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
脇田 隆字 国立感染症研究所, 所長, 所長 (40280789)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HCV / DAA / 肝発癌 |
研究実績の概要 |
DAA投与により、多くのHCVキャリアでSVRが達成可能となったが、SVR達成後に発癌率は明らかに低下するが、一部ではSVR後の肝障害の持続や、肝発癌が問題となっている。長期間の持続感染による肝炎による細胞障害、組織障害の分子機構は十分に解明されておらず、これらの障害がDAA治療により正常化するのかは解明されていない。 HCV感染は肝臓に持続感染して慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌といった慢性肝障害を引き起こす。慢性肝障害は肝細胞のアポトーシス、リンパ球浸潤、脂肪肝などを伴う。さらに線維化が進行すると肝小葉が再構築され、肝臓の血液循環動態も変化する。従って、HCV持続感染による肝障害はウイルス感染や宿主の免疫反応だけではなく、肝臓の組織再構築による変化も関与する。従って、SVR達成された後も、引き続き肝障害が持続し、肝発がんに至ることもあり得る。 本研究ではウイルス培養モデル、ヒト肝細胞キメラマウス、HCVキャリアおよびSVR患者の肝生検サンプルのウイルス感染細胞の小器官構造変化、遺伝子発現変化に着目して解析する。SVR後の肝発癌や持続する肝障害の発生機構および関連する宿主因子を解明することが目的である。 今年度の研究だが、これらの機構を細胞レベルで解析するため、我々はCre-loxPシステムと蛍光タンパク質を用いてHCV感染前からウイルス排除までの一連の現象を同一クローン細胞で解析できる実験系を構築した。これにより、一定の感染を受けた感染細胞のみ蛍光で分取可能になった。これら細胞について次世代シーケンスによる遺伝子発現解析を行い、HCV排除により感染前の状態に回復する可逆的な遺伝子、回復しない不可逆的な遺伝子を同定した。また、SVR達成後の肝組織についても同様に次世代シーケンスによる遺伝子発現解析を行っており、細胞系での結果と合わせることで肝障害、肝癌マーカーの探索を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCV感染モデルと臨床材料を用いて、解析を進めている。遺伝子発現プロファイルの解析により候補遺伝子の同定も進んだ
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今後の研究の推進方策 |
Cre-loxPによるスイッチング実験系により、ウイルス感染による細胞小器官構造変化、遺伝子発現変化を解析する。また、細胞培養時に酸素分圧濃度を変化させることにより、正常肝臓の門脈優位な低酸素状態から慢性肝障害における動脈優位な高酸素状態における細胞変化を解析する。未感染細胞、ウイルス感染細胞、ウイルス排除後細胞からRNA、ゲノムDNA、タンパク、脂質を抽出して網羅的に解析する。電子顕微鏡で観察して細胞内小器官の構造変化を解析する。さらに、慢性HCVキャリアおよびSVR達成後の肝生検検体を解析する。これまでにHCV感染肝臓における細胞小器官構造変化を解析してきている。小胞体由来と考えられるDouble Membrane Vesicle(DMV)の形成やミトコンドリア異常が、ウイルス感染による典型的な変化である。SVR達成後の肝臓にもこれらの変化が残存する検体を検索し、その遺伝子発現変化を解析する。これらの解析により、DAAによるウイルス排除後の肝組織・細胞変化に関連する宿主因子を同定する
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行のため、予定していた学会出張が取りやめになったため次年度の研究に活用する
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