研究実績の概要 |
本研究では、様々なデータを統合解析してPBC病態形成におけるPRKCBとその関連遺伝子の意義と役割を検討した。 PRKCBの遺伝子多型(rs9940072)のリスクアリルが全血、CD19陽性B細胞、CD14陽性単球・マクロファージ細胞のPRKCB遺伝子発現を有意に増加させることが明らかとなった。これらの結果と一致して、PBC肝組織ではPRKCB遺伝子発現が増加し、門脈域に集積したCD20陽性B細胞とCD68陽性単球・マクロファージ―細胞にPRKCBタンパクが発現していた。In vitroの解析により、PRKCBはケモカイン誘導によるマクロファージの遊走性に関与することが明らかになった。 またPRKCBは、PBC疾患感受性遺伝子であるPOU2AF1と共にPBC門脈域内に形成された異所性リンパ濾胞に高発現していることが明らかとなった。PBC肝組織網羅的遺伝子発現データ、Chip-Atlasデータ、in vitro解析データを用いた統合解析により、POU2AF1はPBCで増加しているサイトカインなどの刺激によりB細胞に誘導され、胆管周囲の炎症、異所性リンパ濾胞の形成、他の疾患感受性遺伝子などの制御を介してPBCの発症や活動性に関与する可能性が示唆された。 転移性肝癌の正常部位と比較してPBC肝組織で有意に変動していた2,848遺伝子(PBC肝組織変動遺伝子)を重み付き遺伝子共発現ネットワーク解析し、PBC肝組織変動遺伝子におけるPRKCBの位置づけを検討した。PBC肝組織で共発現ネットワークを形成する4つのモジュールの中で、臨床病期,アルブミン, AST, ALP, IgM, 抗gp210抗体と有意に相関し、免疫シグナル (サイトカインシグナル, 抗原提示シグナル, ケモカインシグナル)に関連する遺伝子が集簇しているモジュールにPRKCBは含まれていることが明らかとなった。
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