研究課題
本研究は膵臓選択的なハイドロダイナミック遺伝子導入法(HGD)を膵癌の新規遺伝子治療法に応用するための方法論、抗腫瘍効果を学術的に検証するためのステップと位置づけ、膵癌モデルの確立、HGDパラメーターの確立、治療遺伝子の選択、効果と安全性の検証、膵癌モデル動物に対する治療効果の検証を行うことを目的としている。本年度は、効率的な膵癌モデル作製のためのハイドロダイナミック遺伝子導入法のパラメーター(遺伝子注入、遺伝子)を確立し、膵臓選択的なハイドロダイナミック遺伝子導入法を用いて、膵癌モデル動物を確立することに重点を置いて研究を行った。具体的には、1.効率的な発癌のための、ハイドロダイナミック遺伝子導入法の時間-内圧曲線などのパラメーターを最適化した。発癌遺伝子導入後4週ごとに、20週後まで、経時的にラット各15匹に対し、各パラメーターのもとで、各種の膵癌関連遺伝子発現ベクター(Myc, K-ras及びその変異体K-rasG12D, N-ras及びYap遺伝子)またその組み合わせの遺伝子溶液を膵臓選択的にハイドロダイナミック遺伝子導入した。2. 腫瘍発生効率、組織学的な性状、腫瘍内の発がんシグナル伝達などの分子生物学的特徴から発生した膵腫瘍がヒト膵癌と近似することを確認した。3. 導入遺伝子量、導入後経過時間、発がん遺伝子の組み合わせにより、膵管上皮の異型から、癌病変である膵上皮内腫瘍性病変を形成する素地となる腺房-導管異形成の発生、悪性度の高い膵癌、肝臓、皮下、リンパ節転移モデルまで様々な段階の膵癌モデルを作成することができた。これらの解析から、膵癌モデルの癌組織及び周辺組織の遺伝子発現変化が明らかとなり、膵癌遺伝子治療のための治療遺伝子確立及び膵癌細胞選択性を担保するためのプロモーターの確立に結び付くと考える。
2: おおむね順調に進展している
1. 膵臓選択的なハイドロダイナミック遺伝子導入法により、効率的にラット膵癌モデルを確立した。2. 方法論の確立と共に、多段階的な膵癌モデルの腫瘍を組織学的、分子生物学的に解析しており、治療対象分子の絞り込みが可能である。3 研究協力者である、仁科博史教授、大塚正人教授、Dexi Liu教授より、研究の方向性について、適切なアドバイスを得ることが可能であった。以上の点から、現時点で本研究が順調に進展していると評価した。
令和4年度は前年度の結果に基づき、膵癌モデルで活性化している発がんシグナル伝達など、治療遺伝子の選択に係る分子メカニズムの解明に重点を置いて検証する。具体的には、1.上記の膵管上皮異型、腺房-導管異形成、膵上皮内腫瘍性病変、悪性度の高い膵癌、肝臓、皮下、リンパ節転移など様々な段階の膵癌モデルの腫瘍細胞を対象として、経時的に発現が変化する遺伝子群について、real time PCRにより解析し、蛋白発現変化を免疫染色、Western Blot法の分子生物学的な検証により解析する。2. 1の結果から膵癌遺伝子治療のための治療遺伝子の選択を行う。申請者らはこれまでに肝癌に対する遺伝子治療開発の過程で、細胞の蛋白合成を阻害し、細胞死を誘導するジフテリアトキシンAフラグメント遺伝子発現プラスミドの抗細胞増殖効果、蛋白合成阻害効果を報告しており、本遺伝子を含む治療遺伝子候補の遺伝子発現プラスミドを確立する。その抗腫瘍効果をin vitroで膵癌培養細胞株(AsPC-1, Capan-1, 等)に遺伝子導入し、細胞増殖、アポトーシス等を評価し、抗腫瘍効果を評価する。以上の結果から、HGDによる膵癌遺伝子治療を行うためのモデル、治療遺伝子が確立する。本検証の系統的な方法論は申請者らが肝癌遺伝子治療の確立の過程で実施しており、応用できる。
予定していた試薬の納品が少し遅れたため、次年度使用額が生じました。計画に従って進めてまいります。
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