本研究では転写後調節に関係する因子が大腸癌診療のバイオマーカーとなりえるか検討した。転写後調節に関連するバイオマーカーとしてmicroRNA(miRNA)やRNA結合蛋白があり研究が広くなされている。Alternative polyadenylation (APA)はmRNAの3' 非翻訳領域(UTR)が変化することをさすが、 3' UTRが変化しその短縮が起こるとRNA結合蛋白やmiRNAの結合部位が欠失するため転写後調節が変化する。そのためAPAもmiRNAと同様に転写後調節のバイオマーカーとして期待されている。APAはpolyadenylation関連因子の異常によりもたらされるが、基礎的および臨床的な検討は限られている。 本研究で臨床検体と細胞株を用いてAPAが大腸癌のバイオマーカーとなりえるか検討している。過去の報告からNUDT21、PABPN1、PCF11がバイオマーカーとなりえると予測した。2021年度に樹立したNUDT21ノックアウトおよびノックダウン大腸癌細胞株とPABPN1ノックアウト大腸癌細胞株を用いた実験を行った。NUDT21およびPABPN1の発現を低下させると細胞増殖が抑制された。また手術検体を用いたPABPN1とNUDT21の免疫組織化学染色による評価を行い非癌部に比べて癌部で発現が亢進していることが分かった。PABPN1とNUDT21が大腸癌で腫瘍促進的に働いている可能性が示唆された
|