研究課題/領域番号 |
20K08382
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本多 隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (10378052)
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研究分担者 |
藤城 光弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70396745)
加藤 あす香 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (00801333)
石川 哲也 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (10288508)
由雄 祥代 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 肝疾患先端治療研究室長 (10774060)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | B型肝炎 / HBs抗原消失 / Functional Cure / 機能的治癒 / コア変異 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
B型肝炎の肝炎沈静化及びHBs抗原が陰性化する機能的治癒(Functional Cure: FC)に関連する因子について、コア変異を含むウイルス変異、免疫応答、腸内細菌叢、miRNAの解析を含め、多面的に調べることにより、コア変異と免疫応答の関係、腸内細菌叢を介した免疫応答とFCの関連などを明らかにすることを目的として研究をおこなっている。 FCに至る経過の良い症例の特徴を調べるため、肝発癌歴のない B 型慢性肝炎症例においてI97 野生型(wt)またはI97L を同定した。HBs抗原消失は症例による経過年数の影響があるためCoxの比例ハザード解析によりFCに関わる因子を解析した。B 型慢性肝炎159症例中15例でHBs抗原消失がみられ、11例73.3%はI97L変異のある症例であった。Cox比例ハザードにより有意な因子としてHBs抗原低値、I97L変異がみられることであった。このことからI97L変異はHBs抗原とともにFCの予測因子となる可能性が示唆された。 腸内細菌に関しての検討では、糞便の検体が得られているB型肝炎患者で肝炎が沈静化している患者13名(肝炎沈静化例)と肝硬変、肝癌既往を含む肝炎が持続している症例30例(肝炎進展例)の腸内細菌を比較したところ、肝炎沈静化例と肝炎進展例の間で腸内細菌叢に影響を及ぼす因子に有意な差はみられなかった。FC達成に近い肝炎沈静化例では肝炎進展例と比較して、Faecalibacterium prausnitziiの割合が有意に高値であった。一方、Prabacteroides属、Ecbacterium属の割合は有意に低値であった(P<0.05)。Faecalibacterium prausnitziiは酪酸産生菌として知られており、短鎖脂肪酸などの代謝産物が炎症を抑制することも報告されており、B型肝炎のFCに関連する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したウイルス変異、免疫応答、腸内細菌叢、miRNAの解析ができるprospectiveに集積した症例が8割程度進んでいる。今年度はretrospectiveな症例でI97L変異とFCの関連を確認することができた。また、FC達成に近い肝炎沈静化例では肝炎進展例と比較して腸内細細菌叢の違いが関連する可能性があり、現在のコホートに繋げることができると思われる。 上述のようにI97L変異はFCの予測因子となる可能性が示唆されFCになる前の低HBV DNAの状態で変異がより高率にみられる可能性があるが、HBV DNAが低値になるとコアの変異測定が難しくなるため、ウイルス量低値の症例からI97L変異が検出できるようなddPCR用の特異的なプライマー、プローブの設計を行ってきた。しかし、コア遺伝子のI97付近は塩基の多型が多く、その検出したいI97L変異に特異的に結合するようなプローブの設計が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
症例数を増加して次年度前半にウイルス変異、免疫応答、腸内細菌叢、miRNAの解析ができるデータ集積を完了し、得られた症例で腸内細菌叢を同定する。コア変異と腸内細菌との関連を比較すると同時に、コアの変異が起こる原因検索として免疫応答、miRNAの解析を行う予定である。 ウイルス変異に関する検討では、変異にマッチしたprimerを用い、SYBR法を用いて変異を検出し、もう一方で、ウイルスの保存領域をPCRすることで、ウイルスの量を確認し、変異の割合を検出できるか検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
腸内細菌叢及びmiRNA測定を予定していたが、翌年度に測定をすることになったため。
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