研究課題/領域番号 |
20K08385
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡 志郎 広島大学, 病院(医), 講師 (30403538)
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研究分担者 |
田中 信治 広島大学, 病院(医), 教授 (00260670)
卜部 祐司 広島大学, 病院(医), 助教 (10648033)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大腸T1癌 / マクロファージ / 転移 |
研究実績の概要 |
粘膜内腫瘍、粘膜下層浸潤(SM)癌、進行癌全53例のヒト大腸腫瘍臨床検体を用い、腫瘍進展におけるtumor-associated macrophage(TAM)の数、表現型、腫瘍内での局在を評価した。TAMの表現型を評価は、抗CD68抗体(汎マクロファージマーカー)と抗CD163抗体(M2マーカー)を用いた蛍光二重免疫染色でCD68+CD163-をM1、CD68+CD163+をM2と定義した。また、腫瘍を腫瘍内部、腫瘍浸潤先進部、腫瘍辺縁、腫瘍外側正常部の4つの部位に分け、腫瘍内での局在性の評価を行なった。蛍光二重免疫染色を行なった検体を蛍光顕微鏡で観察し、マクロファージ高浸潤部を同定した。その後、解析ソフトを用いて腫瘍進展におけるマクロファージの数、表現型、腫瘍内での局在について検討を行なった。次にSM87例のヒト大腸癌臨床検体を用い、上記と同様の蛍光二重免疫染色を行って浸潤先進部のTAMの数、表現型を評価し、SMにおける浸潤先進部のTAMの数、表現型とリンパ節転移を含む臨床病理学的特徴との関連について検討を行なった。腫瘍の進展に伴い、TAM、特にM2マクロファージ(M2)の数、比率が増加し、浸潤先進部でその傾向が顕著であった。粘膜下層浸潤癌87例の臨床検体を用いた検討では、浸潤先進部のM1マクロファージ(M1)の数が少なく、M2数が多い症例で病理学的悪性度が高くリンパ節転移率が高かった。さらに、ROC曲線解析でリンパ節転移の予測能を検討したところ、浸潤先進部の汎マクロファージ数、M1数、M2数、M2/M1比のAUCはそれぞれ0.64、0.78、0.87、0.90で、M2/M1比のAUCが最も高かった。以上より、大腸癌の進展において、浸潤先進部のTAMが重要な役割を果たしており、TAMが転移の予測因子となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床検体(転移を有する大腸T1癌)の症例集積が不十分なため。ゲノム解析が予想よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
他施設を含めた症例のリクルートを図ることと、転移のみならず大腸癌の発育進展に関するゲノム解析を進める。
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