研究課題/領域番号 |
20K08386
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松本 俊彦 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70634723)
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研究分担者 |
藤澤 浩一 山口大学, 医学部, 講師(寄附講座等) (00448284)
高見 太郎 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60511251)
山本 直樹 山口大学, 教育・学生支援機構, 教授 (90448283)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
我々は肝移植に代わる肝硬変治療法として「自己骨髄間葉系幹細胞 (MSC)を用いた肝臓再生療法」を開発してきた。臨床研究で有効性が示唆されたが、効果が短期間であることが課題であった。そこで本研究では、MSC由来exosomeにmiR-5682の肝星細胞に対する線維産生抑制効果を付加した抗線維化作用増強exosomeを作製する。miR-5682は肝星細胞が産生する主な線維(Collagen I, III, V, Elastin)の発現を網羅的に抑制するmicroRNAである。これにより低侵襲かつ頻回投与が可能な抗線維化治療法を開発し、「長期継続型のMSCを用いた低侵襲肝臓再生療法」のProof of concept 取得を目指す。 令和2年度は、miR-5682 mimic導入ヒト・マウス肝星細胞における網羅的遺伝子発現の検討、レンチウイルスを用いたmiR-5682導入MSCの作製を行った。miR-5682 mimic導入ヒト・マウス肝星細胞を用いたSAGE法による遺伝子発現解析では、両者に共通してCol1a1, Col3a1, Col5a2の発現低下を認め、Western blottingによりCollagen I, III, Vの発現低下を確認した。以上より、miR-5682の肝線維化に対する効果をマウス肝線維化モデルで評価することは可能であると考えた。また、exosomeに取り込まれるsmall RNA特異配列、miR-5682、蛍光蛋白GFPを組み込んだレンチウイルスベクターを作成し、MSCに遺伝子導入を行った。GFP発現により遺伝子導入を確認し、非導入MSCと比べ、導入MSCのexosome中にmiR-5682が高発現することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、miR-5682導入ヒト・マウス肝星細胞における網羅的遺伝子発現の検討を行い、miR-5682はヒト・マウス肝星細胞に共通してCollagen I, III, Vの発現を低下させることを確認し、マウスモデルを用いて有効性を評価することの妥当性を確認した。また、エクソソーム中にmiR-5682を高発現するMSCの作成について、当初の計画より前倒しで行い、レンチウイルスベクターとmiR-5682導入MSCの作成に成功した。以上より、これまでの進捗はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究成果を受けて、miR-5682の肝硬変に対する治療効果の評価を行う。当初の計画通り、in vitroでは、miR-5682導入MSC由来exosomeのマクロファージ、肝星細胞に対する作用の検討を行う。また、in vivoでは、マウス肝線維化モデルを作製してmiR-5682 mimic 投与群、miR-5682導入MSC exosome群、miR-5682非導入MSC exosome群、control群に分け、頻回投与後の肝線維化を評価する。これによりmiR-5682単独投与とmiR-5682含有MSC exosome投与の比較を含むmiR-5682の肝線維化改善効果について検討し、「長期継続型のMSCを用いた低侵襲肝臓再生療法」のProof of conceptを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、令和2年度にin vivoでマウス肝線維化モデルを用いたmiR-5682 mimicの抗線維化効果と安全性の評価を行うことを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、試薬の供給や継続的な実験が困難になることが予想されたため、in vitroでのレンチウイルスを用いたmiR-5682導入MSCの作製を前倒しで行うこととした。in vivoの遺伝子導入試薬は高価であるため、計画の変更に伴い次年度使用額が生じることとなった。令和3年度以降、マウス肝線維化モデルを用いて、miR-5682 mimic及びmiR-5682含有exosomeの抗線維化効果と安全性の評価を行う予定としており、令和2年度の次年度使用額と令和3年度以降の助成金を合わせてこれらの研究を推進する。
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