研究実績の概要 |
我々は肝移植に代わる肝硬変治療法として「自己骨髄間葉系幹細胞(MSC)を用いた肝臓再生療法」を開発してきた。臨床研究で有効性が示唆されたが、効果が短期間であることが課題であった。そこで本研究では、肝星細胞(HSC)が産生する主な線維(Collagen I, III, V, Elastin)の発現を網羅的に抑制するmiR-5682の効果をMSC由来exosome(MSC-Exo)に付加した抗線維化作用増強Exoを作製することを目的とした。 まず、SAGE法によるmiR-5682 mimic導入ヒトHSC・マウスHSCの網羅的遺伝子発現解析では共通してCol1a1, Col3a1, Col5a2 mRNAの発現低下を認め、Western blottingでCollagen I, III, V蛋白の発現低下を確認した。これよりmiR-5682の効果を肝線維化モデルマウスで評価可能であると判断した。続いて、Exo中のsmall RNA特異配列とmiR-5682を組み込んだlentivirus vectorを用いてヒトMSC細胞株に遺伝子導入を行い、Exo中にmiR-5682を高発現するMSCを作成した。しかし、miR-5682またはlentivirusによるMSC細胞株の増殖抑制が強く、以降の実験に不都合であると判断し、同様の手法を用いてmiR-5682導入ヒト単球細胞株を作製した。続いて、miR-5682導入単球細胞株Exoの添加によりヒトHSCに対する作用の評価を行い、用量依存性にHSCのCollagen I, III発現を低下させることを確認した。また、MSC-Exoとの併用添加により相加的にHSCの線維産生は抑制された。さらに、NASH肝線維化モデルマウスを作製し、miR-5682導入単球細胞株Exoを投与すると、非導入単球細胞株Exoと比較し、線維化の軽減が確認された。以上より、ExoはmiR-5682のDrug Delivery Systemとして有用であり、MSCを用いた肝線維化治療の補助療法となる可能性が示唆された。
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