• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

PKR代謝制御に着目したNASH関連肝細胞癌の発症・進展機序解明と創薬応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K08388
研究機関愛媛大学

研究代表者

渡辺 崇夫  愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (90650458)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード肝細胞癌 / PKR / 細胞増殖 / 代謝 / 結合蛋白質
研究実績の概要

我々はこれまでにPKRはErk1, JNK1およびその下流のc-Fos、c-Junを活性化、肝細胞癌の細胞増殖シグナルを増強することで、腫瘍の進展を助長していることを明らかにした。また、PKR阻害剤 (imidazolo-oxindole)は、腫瘍の増殖を著明に抑制するとともに、増殖因子の発現抑制により血管新生を抑制する機序も有していた。そこで、PKRによる癌促進の機序を明らかにするため、肝細胞癌細胞株Huh7細胞にPKR阻害剤を加えることで変化するリン酸化タンパク質を質量分析の手法で網羅的に解析し、PKR阻害剤のキナーゼとしてのターゲットを複数同定した。その中で、肝癌細胞内の代謝制御に関与している可能性のある分子が複数見られたが、特に解糖系の主要酵素であるHexokinase-2 (HK2)に注目した。細胞外フラックス・アナライザーを用いて、解糖系, ミトコンドリア呼吸を解析した結果、PKR阻害剤投与により、特に解糖系によるATP産生が著しく低下することが明らかとなった。次にPKRとHK2の直接的な相互作用を確認するため、タグ付PKR、HK2発現プラスミド、さらにリン酸化活性を消失させたmutant typeであるPKR K296Rのタグ付き発現プラスミドも作成し、wild typeとmutant typeでの反応の違いをみることでPKRシグナル依存的な蛋白質相互作用を検討した。タンパク質発現はwild typeに比べmutant typeで高かった一方で、HK2との結合はmutant typeとのみで顕著にみられた。つまりPKRとHK2の結合がPKRのシグナル依存的であり、HK2がPKRのkinaseとしての器質となっている可能性があると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

肝癌細胞において、PKRが癌細胞内代謝制御に関わっていることを予想し、検討を進めている。昨年度までに細胞外フラックス・アナライザーを用いて、解糖系, ミトコンドリア呼吸を解析し、実際にPKR阻害剤投与によりエネルギー産生が著明に低下することが明らかとなった。また、肝細胞株へのPKR阻害剤添加によりHK2の発現が容量依存的に低下することも確認している。今年度は、PKRとHK2の相互作用について詳細な解析を行った。IP-MSによりPKR, HK2の結合蛋白質の解析を行い、共通の結合蛋白質としてEIF2S3を同定していたため、PKRとHK2はEIF2S3を介して結合、相互作用するのことを想定しIP-westernを行った。その結果HK2とEIF2S3の結合は明らかであったが、一方でPKRとEIF2S3の結合は確認できなかった。そこでPKR wild typeに加え、リン酸化活性を消失させたmutant typeであるPKR K296Rのタグ付き発現プラスミドも作成し、PKRとHK2の蛋白質相互作用を検討した。その結果、PKRのHK2の結合はmutant typeとのみ確認され、PKRのシグナル依存的であることが明らかとなった。
また、他機関より供与されたPKRノックアウトマウスを用いた実験も進めている。WTマウス, PKRノックアウトマウスそれぞれを、4週齢よりwestern dietを与え、食餌性NASHモデルをとして検討を行った。今年度はwestern diet 24W投与の段階で評価を行った。しかしWT、PKRノックアウトマウスともに著明な肝脂肪化がみられたが肝線維化は明らかでなく、今後はwestern dietの負荷を48Wに延長し投与を行うこととし準備を開始した。

今後の研究の推進方策

昨年度までに肝細胞癌におけるPKRとHK2の相互作用を明らかとした。今後は肝細胞癌細胞株においてHK2発現、あるいはHK2のリン酸化がどのような癌促進作用を持っているか、またその作用がPKRとHK2の相互作用に依存しているかどうかを明らかにしてたい。またPKRとHK2の結合がPKRのシグナル依存的であったため、HK2がPKRのkinaseとしての器質となっている可能性を考えている。そこでPhos-tag電気泳動を用いてリン酸化HK2を検出して、それがPKRのシグナルに依存するかどうかを検討していく予定である。またマウスの食餌性NASHモデルの実験については、PKRノックアウトマウスとwild typeマウスにwestern diet 48W投与を進めており、肝線維化、肝癌発生について比較していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

学会参加のための旅費を計上していたが、新型コロナウイルスの感染状況によりwebでの参加が主となったため次年度以降に繰り越した。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] AFP and eGFR are related to early and late recurrence of HCC following antiviral therapy.2021

    • 著者名/発表者名
      Watanabe T, Tokumoto Y, Joko K, Michitaka K, Horiike N, Tanaka Y, Tada F, Kisaka Y, Nakanishi S, Yamauchi K, Ochi H, Hiraoka A, Yagi S, Yukimoto A, Hirooka M, Abe M, Hiasa Y
    • 雑誌名

      BMC Cancer

      巻: 14;21(1) ページ: 699

    • DOI

      10.1186/s12885-021-08401-7.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The long noncoding RNA of RMRP is downregulated by PERK, which induces apoptosis in hepatocellular carcinoma cells.2021

    • 著者名/発表者名
      Yukimoto A, Watanabe T, Sunago K, Nakamura Y, Tanaka T, Koizumi Y, Yoshida O, Tokumoto Y, Hirooka M, Abe M, Hiasa Y.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12;11(1) ページ: 7926

    • DOI

      10.1038/s41598-021-86592-6.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD regulates the growth of pancreatic ductal adenocarcinoma.2021

    • 著者名/発表者名
      Koizumi M, Watanabe T, Masumoto J, Sunago K, Imamura Y, Kanemitsu K, Kumagi T, Hiasa Y.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 16;11(1) ページ: 22351

    • DOI

      10.1038/s41598-021-01465-2.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Validation of the FibroScan-aspartate aminotransferase score by vibration-controlled transient and B-mode ultrasound elastography.2021

    • 著者名/発表者名
      Hirooka M, Koizumi Y, Yano R, Sunago K, Watanabe T, Yoshida O, Tokumoto Y, Abe M, Hiasa Y.
    • 雑誌名

      Hepatology Research

      巻: 51(6) ページ: 652-661

    • DOI

      10.1111/hepr.13646.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Relationship between body composition and the histology of non-alcoholic fatty liver disease: a cross-sectional study.2021

    • 著者名/発表者名
      Miyake T, Miyazaki M, Yoshida O, Kanzaki S, Nakaguchi H, Nakamura Y, Watanabe T, Yamamoto Y, Koizumi Y, Tokumoto Y, Hirooka M, Furukawa S, Takeshita E, Kumagi T, Ikeda Y, Abe M, Toshimitsu K, Matsuura B, Hiasa Y.
    • 雑誌名

      BMC Gastroenterology

      巻: 13;21(1) ページ: 170

    • DOI

      10.1186/s12876-021-01748-y.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] SVR後の食道胃静脈瘤増悪を予測する因子の検討2021

    • 著者名/発表者名
      渡辺崇夫、徳本良雄、上甲康二、道堯浩二郎、堀池典生、田中良憲、木阪吉保、多田藤政、中西征司、八木専、山内一彦、廣岡昌史、阿部雅則、日浅陽一
    • 学会等名
      第56回日本肝臓学会総会
  • [学会発表] SVR後の肝癌サーベイランス法の検証2021

    • 著者名/発表者名
      渡辺崇夫、徳本良雄、日浅陽一
    • 学会等名
      第24回日本肝臓学会大会
  • [学会発表] 小胞体ストレスに関連する long noncoding RNA RMRP を介した肝細胞がんのアポトーシス誘導作用2021

    • 著者名/発表者名
      行本 敦,渡辺崇夫,日浅陽一
    • 学会等名
      第44回日本肝臓学会西部会
  • [学会発表] Predictors of hepatocellular carcinoma recurrence after direct-acting antiviral therapy in patients with HCV infection2021

    • 著者名/発表者名
      Takao Watanabe, Yoshio Tokumoto, Atsushi Yukimoto, Yuki Okazaki, Kotaro Sunago, Yohei Koizumi, Osamu Yoshida, Masashi Hirooka, Masanori Abe, Yoichi Hiasa
    • 学会等名
      JSH International Liver Conference 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] Sex-related Differences in Predictors of HCC Incidence after DAA Therapy in Patients with HCV2021

    • 著者名/発表者名
      Takao Watanabe, Yoshio Tokumoto, Atsushi Yukimoto, Yoshiko Nakamura, Yuki Okazaki, Kotaro Sunago, Yohei Koizumi, Osamu Yoshida, Masashi Hirooka, Masanori Abe, Yoichi Hiasa
    • 学会等名
      APASL Oncology 2021
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi