研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎は直腸から炎症が生じ、口側に伸展する難治性疾患である。直腸に発症のトリガーとなる因子がある可能性があり、今回潰瘍性大腸炎(UC)寛解期患者とコントロール(ポリープ切除患者)群を比較検討し、UC患者における直腸環境の特殊性を解析した。 直腸・結腸の粘膜バリア機能を、内視鏡下のインピーダンス測定とex vivoのウッシング・チャンバーにて評価し、UC寛解期とコントロール群を比較検討した。盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸では差がなかったが、UC寛解期の直腸においてのみコントロール群と比較して有意にバリア機能が低下していることが分かった。 さらに、各群の直腸と盲腸から組織を採取し、病理学的評価および炎症性サイトカインやtight junction, ムスカリン受容体に関連する遺伝子発現をreal time q PCRにて評価した。組織的評価ではいずれも炎症スコアにおいて有意差はなかったが、炎症性サイトカンではIL-1βとIL-6がUC寛解期直腸で有意に上昇していた。その他のサイトカインでは差がなかった。また、Tight junction関連分子の遺伝子発現は、ZO-1. Occludin (OCLN), Claudin1では差はなかったが、Claudin 2でUC寛解期直腸にて有意に上昇していた。一方、遺伝子発現レベルとインピーダンス値の相関を見たところ、IL-1β、CHRM2,3にて逆相関を認めた。 既報では、IL-1βの上昇にてmicroRNA (MIR200C-3p)が転写因子を介して、OCLNの翻訳をブロックすることが報告されているが、我々の研究ではOCLNの低下はなく、Claudin 2が上昇していた。Claudin2はtight junctionにporeを形成することに関与しており、これが粘膜バリア機能に関与している可能性が示唆されている。
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