研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎は直腸から炎症が生じ、口側に伸展する難治性疾患である。直腸に発症のトリガーとなる因子がある可能性があり、今回潰瘍性大腸炎(UC)寛解期患者とコントロール(ポリープ切除患者)群を比較検討し、UC患者における直腸環境の特殊性を解析した。 直腸・結腸の粘膜バリア機能を、内視鏡下のインピーダンス測定とex vivoのウッシング・チャンバーにて評価し、UC寛解期32例とコントロール群22例を比較検討した。インピーダンス値はウッシング・チャンバーの値は正の相関を示し、粘膜のバリア機能を反映していることが示唆され、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸では両群間に差がなかったが、UC寛解期の直腸においてのみコントロール群と比較して有意にインピーダンス値が低下していることが分かった。さらに、経過を前向きに追った結果、1年以内に32例中5例の再燃を認め、再燃群において有意にインピーダンス値が低かった。 各群の直腸と盲腸から組織を採取し、病理学的評価および炎症性サイトカインやtight junction, ムスカリン受容体に関連する遺伝子発現をreal time q PCRにて評価した。組織的評価ではいずれも炎症スコアにおいて有意差はなかったが、炎症性サイトカンではIL-1βとIL-6がUC寛解期直腸で有意に上昇していた。その他のサイトカインでは差がなかった。また、Tight junction関連分子の遺伝子発現は、ZO-1. Occludin (OCLN), Claudin1では差はなかったが、Claudin 2でUC寛解期直腸にて有意に上昇していた。一方、遺伝子発現レベルとインピーダンス値の相関を見たところ、IL-1β、IL-6、Claudin2と有意な逆相関を認めた。
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