研究課題
予後不良な消化器癌である食道扁平上皮癌ではp53変異が高頻度に認められるが、変異p53自体は治療標的とはならず、有効な分子標的薬も存在しない。本研究では、p53の機能獲得(GOF)変異に着目し、p53ネットワークにかかわるトランスクリプトームの全容をゲノム情報を駆使して効率的に分析し、機能解析へと展開する。さらに発現異常、遺伝子変異の有無、悪性度および治療効果との関連性を解析することで、食道癌の新しい診断・治療効果予測システムを開発しようとするものである。最終年度である本年度は以下の研究成果をあげた。1)前年度、血液中を流れる患者特有のがん由来DNA(ctDNA)について、NGS、およびデジタルPCRを用いた超高感度検査を確立し、種々の癌患者診療における実用性を明らかにした。 引き続き追加症例(食道扁平上皮癌患者22例、口腔扁平上皮癌5例、頭頚部癌22例、大腸癌18例)のctDNA モニタリングのフォローアップを継続して行っている。2) 食道の表皮化(epidermalization)粘膜に発生した上皮内扁平上皮癌についてがん関連遺伝子の異常を解析した。p53変異、がん関連遺伝子のコピー数異常が癌部だけではなく表皮化粘膜からも検出され前癌病変であることが示唆された(Pathology Int. 73: 327-329, 2023)。3) 野生型p53、およびTAp63/p73がmiR-142-3pの転写誘導を介して核外輸送受容体XPO1を発現抑制していることを明らかにした。p53ファミリーがmiRNAを介して自らの機能を増強させる正のフィードバック機構を示唆しており、新たながん治療の標的となりうることを示した(論文投稿中)。
すべて 2023 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Cancer Epidemiology
巻: 87 ページ: 102455~102455
10.1016/j.canep.2023.102455
Pathology International
巻: 73 ページ: 327~329
10.1111/pin.13348
https://researcher.sapmed.ac.jp/search?m=home&l=ja
https://web.sapmed.ac.jp/biol/sasaki.html