研究課題/領域番号 |
20K08391
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
片岡 洋望 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40381785)
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研究分担者 |
矢野 重信 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (60011186)
野元 昭宏 大阪公立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60405347)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光線力学療法 / 癌微小環境 / 腫瘍関連マクロファージ / 免疫チェックポイント阻害剤 / 免疫免疫 |
研究実績の概要 |
光線力学療法(PDT)は、光感受性薬剤を取り込んだ腫瘍細胞に,レーザー光を照射して活性酸素の惹起によりがん細胞を死滅させる治療法です。M2様腫瘍関連マクロファージ(M2-TAM)やがん細胞に高発現するマンノース受容体を標的とした光感受性薬剤、マンノース結合-クロリンe6(M-chlorin e6)を合成しPDT効果を検討した。M-chlorin e6-PDTは腫瘍量を減少させ、M2-TAMの割合を減少させた。 がん細胞の破壊によりhigh mobility group box (HMGB)-1,Calreticulin (CRT)などのDAMPs( Damage Associated Molecular Patterns)が惹起され,死滅したがん細胞を貪食する樹状細胞を活性化することが知られている.活性化されて樹状細胞はがん抗原をT リンパ球に提示する(T 細胞のプライミング).がん抗原の情報を得たT 細胞(主にCD8 陽性T 細胞)は,がん局所に遊走しがん細胞を攻撃する. M-chlorin e6-PDTは,がん細胞表面のCRTを増加させ、マクロファージによるがん細胞の貪食を誘導し、CD80+CD86+マクロファージを増加させた。これらの結果から、M-Chlorin e6-PDTは、がん細胞自身への攻撃に加え,マクロファージの貪食作用の増強,抗腫瘍表現型の強化によって、抗腫瘍効果を発揮することが示唆された。 現行の保険承認の光感受性薬剤であるTalaporfinによるPDTと免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体の併用療法は,光線照射側腫瘍のみでなく,非照射側腫瘍のがん微小環境へのCD8陽性T細胞の浸潤を増強し,抗腫瘍効果を増強した.以上のことから,PDTはDAMPsの活性化により癌免疫を誘導し,癌免疫療法を増強することが明らかになった.
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