研究課題
申請者らが提唱した胃癌の組織亜型・胃底腺型胃癌はH. pylori感染とは関係のないH. pylori未感染胃癌の一つであり、2019年にはWHO分類第5版にOxyntic gland adenoma(OGA)とGastric adenocarcinoma of fundic-gland type(GA-FG)という名称で本邦から初めて掲載された特殊な胃癌である。本研究では胃底腺型胃癌患者の発癌・進展機序の要となる原因遺伝子を特定する事を目的として、多領域シークエンスとサブクローン進化構造のクラスタリングの結果から、発癌関連遺伝子の同定及び機能解析を施行するともに、臨床コホートを用いた検証を行う。また、H. pylori炎症発癌以外の新規胃癌発生経路の発見に加えて、胃底腺型胃癌の生物学的解明に基づいた新規治療標的、バイオマーカー発見による臨床応用を目指した研究である。2020年度では、胃底腺型胃癌の新しい組織学的分類を作成し、その分類を基に臨床病理学的解析と次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行った。胃底腺型胃癌は、OGAとGA-FG、Gastric adenocarcinoma of fundic-gland mucosa type(GA-FGM)の3つのタイプに分類され、OGAとGA-FGは低悪性度の胃上皮性腫瘍、GA-FGMは高悪性度の胃上皮性腫瘍であることが判明した。遺伝子解析では、すべてのタイプにある一定頻度でGNAS mutationを認め、同一系統の特殊な胃腫瘍であることも明らかになった。今後は胃底腺型胃癌と通常型胃癌の4つの分子サブタイプ(Epstein-Barr virus陽性癌、マイクロサテライト不安定癌、ゲノム安定癌、染色体不安定癌)との関係性を評価し、多領域シークエンスによる微小組織の包括的ゲノムプロファイリングを施行する予定である。
3: やや遅れている
COVID-19感染拡大により他施設との共同研究解析が円滑に進まなかったため、研究自体はやや遅れている。
他施設との共同研究解析が進まない場合には、研究実績の概要にも記載した通り、胃底腺型胃癌と通常型胃癌の4つの分子サブタイプ(Epstein-Barr virus陽性癌、マイクロサテライト不安定癌、ゲノム安定癌、染色体不安定癌)との関係性を評価するために各サブタイプの遺伝子解析を先に進める予定である。
COVID-19感染拡大により他施設との共同研究解析が施行できなかったため次年度使用額が生じた。次年度も他施設との共同研究解析が施行できない場合には、研究実績の概要にも記載した通り、胃底腺型胃癌と通常型胃癌の4つの分子サブタイプ(Epstein-Barr virus陽性癌、マイクロサテライト不安定癌、ゲノム安定癌、染色体不安定癌)との関係性を評価するための各サブタイプの遺伝子解析に次年度使用額を使用する予定である。
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