我々は、科研費特別研究員奨励費による研究の成果として、Bcl6が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)発症に関与することを肝臓特異的欠損マウスを用いて証明した。Bcl6の分子機能については、B細胞等の免疫細胞ではBCoR等と複合体を形成し、抑制性の転写因子として機能することが報告されている。一方で、肝臓におけるBcl6の分子機能に関する報告はほとんどない。 本研究では、肝臓でのBcl6の分子機能を明らかにし、NASH発症メカニズムの解明・Bcl6およびその下流シグナルをターゲットにしたNASH治療薬の創薬を目的とする。そこで、アデノ随伴ウィルス(AAV)による個体肝臓での遺伝子発現系を用いて、肝臓特異的なBcl6相互作用因子群を精製・同定し、機能解析を行う予定であったが、研究代表者の身分変更に伴い、中途終了となった。 予備的な検討において、Bcl6を過剰発現した個体肝臓は軽度の脂肪肝が誘導されており、この脂肪肝から比重遠心法で肝細胞を単離するのは困難であることが分かった。そこで、新たな肝臓の核単離方法として、スクロース濃度と遠心を利用する方法を検討した。この結果、健常肝臓および脂肪肝の両方で核を単離することに成功した。次にこの方法を用いて、AAV-ControlおよびAAV-hBcl6-FLAGをオスマウスに腹腔内投与した3日後の肝臓から核を単離し、核タンパク質を抽出した。この核タンパク質を用いて、Anti-FLAG M2 agarose affinity gelを用いた免疫沈降およびFLAGペプチドによる溶出を行い、Bcl6相互作用因子群を精製した。この精製サンプルに対して、質量分析測定を行い、Bcl6相互作用因子群を同定したが、細胞質由来と考えられるタンパク質が多く検出され、核由来のBcl6に特異的な相互作用因子群を見出すのが困難であった。このことから、核タンパク質抽出方法を改良する必要があると考えられた。
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