研究実績の概要 |
難治性重症下肢虚血に陥った患者に対して自家骨髄由来単核球局所細胞移植療法がおこなわれているが、動脈硬化を背景とした重症下肢虚血患者での効果は限定的である。下肢閉塞性動脈硬化症では、慢性低酸素の骨格筋組織において更なる虚血イベントとそれに引き続く再灌流が微小血管レベルで繰り返し発生しており、そのサイクルにおいて、ミトコンドリアの非可逆的障害と細胞死、持続する炎症機転を誘導すると考えられている。ミトコンドリア機能の減衰と停止が生じた状態においては、血管新生機転を投入してもそれがもたらす血流回復が活用される場がなく、効果が得られない原因となっている可能性がある。本研究では、成熟雄日本家兎の重症下肢虚血モデルを用いて、自家ミトコンドリア移植を自家骨髄単核球移植と組み合わせることで患肢局所の血流の改善が得られるかどうかを検討した。プロトコルは、以下の通りである。成熟雄日本家兎(3.0-3.5Kg)を用いて麻酔下に左側大腿動脈を剥離・結紮し、片側下肢虚血モデルとした。自家骨髄由来単核球(BM-MNC)は腸骨陵から吸引採取した。ミトコンドリア(Mito)は自家大胸筋切片より分離精製し、MitTracker Red CMXRos (Invitrogen, CA)で標識した後、レスピレーションバッファに浮置した。下肢虚血家兎を虚血作成後7日目に4群(生食水+生食水、生食水+BM-MNC、生食水+Mito、BM-MNC+Mito)に分類し、26G注射針にて大腿動脈虚血領域に6か所局所注入し、移植術施行後28日目に機能的計測を実施し、その後血液・血清・組織を得る予定であったが、家兎ミトコンドリアの分離に成功することができず、ミトコンドリア移植による血流改善効果の検討を行うことができなかった。
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