研究実績の概要 |
2020年度は慢性心不全におけるグリンパティックシステムの時空間的解析を行った。モデル動物として、収縮不全型心不全モデル(冠動脈結紮誘発心筋梗塞)は心筋梗塞1, 7, 14, 28日後に、拡張不全型心不全モデル(Dahl食塩感受性ラットへの食塩負荷)は食塩負荷開始6週, 12週, 16週に、重症心不全モデルラット(自然発症高血圧ラットへの経口塩分負荷+アンジオテンシンII持続静脈内投与)は負荷開始2週, 4週, 6週後に脳の頭側延髄腹外側野・延髄孤束核・視床下部室傍核を取り出した。これらは全てすでに過去の研究で行ってきた手法である。評価は、取り出した各脳部位において、アストロサイトの形態・数およびアクアポリン4発現を免疫組織学的に評価した。その結果、収縮不全型心不全モデルでは7日後にアストロサイトの形態異常(正常から活性化型へ変化)および正常のアストロサイト減少に加え、アクアポリン4発現低下も認め、その後いずれも回復は認められなかった。拡張不全型心不全モデルでは、6週にアクアポリン4発現低下から12週にはアストロサイト形態変化(正常から活性化型へ変化)を、16週には正常アストロサイトの減少を認めた。重症心不全モデルでは、2週にはアストロサイト形態変化(正常から活性化型へ変化)・正常アストロサイト減少を認め、アクアポリン4は2週の時点で収縮不全型や拡張不全型に比べ劇的な発現低下を認めた。これらの結果から、心不全発症早期よりアクアポリン4の発現低下がアストロサイト形態変化・減少に先行もしくは同時期に起こっていることが明らかとなった。現在、グリンパティックシステムの機能評価を各モデル・各評価時期において実施している。
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