研究実績の概要 |
2021年度は慢性心不全におけるグリンパティックシステムの機能評価を心不全モデル動物の各時期において時空間的解析を行った。モデル動物として、前年度と同様に収縮不全型心不全モデル(冠動脈結紮誘発心筋梗塞)は心筋梗塞1, 7, 14, 28日後に、拡張不全型心不全モデル(Dahl食塩感受性ラットへの食塩負荷)は食塩負荷開始6週, 12週, 16週に、重症心不全モデルラット(自然発症高血圧ラットへの経口塩分負荷+アンジオテンシンII持続静脈内投与)は負荷開始2週, 4週, 6週後にグリンパティックシステムの機能評価として、浸透圧ポンプで染色液を脳室内投与し、脳から末梢へ排泄される量を測定した。これはすでに行った実験手法であり、血液検体は保存していたため、その測定を行った。その結果、収縮不全型心不全モデル(冠動脈結紮誘発心筋梗塞)は心筋梗塞7日後より、拡張不全型心不全モデル(Dahl食塩感受性ラットへの食塩負荷)は食塩負荷開始6週より、重症心不全モデルラット(自然発症高血圧ラットへの経口塩分負荷+アンジオテンシンII持続静脈内投与)は負荷開始2週後よりグリンパティックシステムの機能不全が始まっていることが確認された。また、収縮不全型心不全モデル(冠動脈結紮誘発心筋梗塞)は心筋梗塞14日でさらに悪化し、拡張不全型心不全モデル(Dahl食塩感受性ラットへの食塩負荷)は食塩負荷開始12週後は6週後と同等であったが16週後にはさらに悪化し、重症心不全モデルラット(自然発症高血圧ラットへの経口塩分負荷+アンジオテンシンII持続静脈内投与)は負荷開始4週後・6週後とさらに悪化した。つまり、いずれのモデルにおいても回復せずに悪化することが明らかとなった。引き続き、正常ラット脳内にアクアポリン4阻害薬を投与してグリンパティックシステムを機能不全にすることで心不全の血行動態になるかどうかを検証し始めている。
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