研究課題/領域番号 |
20K08411
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
皿井 正義 藤田医科大学, 大学病院, 教授 (10298531)
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研究分担者 |
元山 貞子 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30308902)
河合 秀樹 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (30778361)
外山 宏 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90247643)
市原 隆 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90527748)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心筋脂肪酸代謝 / BMIPP / 心筋血流 / パーフュージョンCT |
研究実績の概要 |
心筋においてはあらゆる状況に応じて、あるいは色々な環境条件に応じて代謝基質が選ば れてエネルギー産生が行われる。脂質、糖質、乳酸、アミノ酸、ケトン等が利用されるが、主なものは前3者であり、通常はそのエネルギー産生に寄与する率は、6対3対1である。糖は解糖系を経てTCAサイクルに、脂質はβ酸化を経てアセチルCoAとしてTCAサイクルで代謝を受け、最終的に水と二酸化炭素に分解される過程で高エネルギーリン酸であるATPを産生する。ブドウ糖と脂質の取り込みを比較する目的で、FDGとBMIPPを利用した実験では、FDGは血流の低下に非常に敏感に反応して、4から5倍の心筋への取り込みの増加が認められるが、BMIPPは血流が40%に低下するまで割合安定した低下を示し、40%を切ると急激な変化を示す (Hosokawa R et al. J Nucl Med. 1997;38(suppl):174)。このように状況に応じて脂質、糖質のエネルギー産生への寄与率が変化することをswitchingとよんでいる。このように、BMIPPは心筋脂肪酸代謝を日常臨床で評価するための唯一のトレーサーである。しかし、現状では相対的かつ定性的な評価にとどまり、心筋血流の影響を受けるため、正確な心筋脂肪酸代謝量を評価することが困難である。本研究では、数学的な手法を用いたCTによる定量的心筋血流量を算出し、BMIPPはダイナミック・スキャンを行い、定量的心筋脂肪酸代謝量を測定し、CTで求めた心筋血流量で標準化し、真の心筋脂肪酸代謝量を検討することを目的と する。現在、症例が10例登録された。数学的な手法で解析するため、これらの症例を使って、計算式を調整し、自動計算するためのプログラムを作成中である。昨年報告時より、症例が6例増え、計算式をより正確にすることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心筋脂肪酸代謝の算出のための計算式作成にやや時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
以前より、BMIPP心筋SPECTを使った研究を行ってきたが、BMIPPの動態が一部で明らか になっていない部分があり、心筋の障害程度や心筋の動きとBMIPP集積に良い相関が認められなかった。SPECT核種は血流に乗って心筋細胞まで到達し、その後心筋細胞内に取り込まれる。そのため、血流の程度が心筋への集積に影響する。その影響を排除するためには、正確な心筋血流量を求めて心筋脂肪酸代謝量を標準化する必要がある。研究分担者の市原らはヨード造影剤が静注され心筋部へ到達する動態を2コンパートメントモデル(Ichihara T et al. IEEE Trans Nucl.Sci. 2011;58:133-138)で記述し、その理論に基づきダイナミック造影CTで血中及び心筋部の造影像から心筋血流値を算出する新しいアルゴリズムを考案し、犬の虚血モデルにて評価した(Ichihara T et al. Fujita Medical Journal 2015;1(1): 9-14)。この方法をヒトで応用し、定量的に心筋血流量を算出する。この血流量の情報で、求められた心筋脂肪酸代謝値を標準化して、正確な心筋脂肪酸代謝量を算出する。国内外ではBMIPP心筋SPECTで心筋脂肪酸代謝を定量化する研究は なく、本研究が初めての試みと考えられる。今後症例数をできる限り増やして、客観性の高いデータを構築していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ下のため、学会参加ができず、旅費などが使用されていないことと物品費が節約できたこと。今後、学会参加やデータ解析用コンピュータの更新に使用する予定。
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