研究課題
QT短縮症候群や早期再分極症候群は、比較的歴史の浅い遺伝性致死性不整脈で、原因遺伝子が数個報告されているものの分子病態は十分に解明されていない。我々は心電図QT時間のゲノムワイド関連解析を参考に、この2つの致死性不整脈の新たな候補遺伝子として4つの心筋トランスポータ遺伝子に着目した。心筋トランスポータは興奮・代謝活動の盛んな心筋におけるCa動態やpHの恒常性維持に必須の膜タンパクであり、その遺伝子異常は活動電位形成に関わるイオンの移動や酸塩基平衡を阻害して不整脈をもたらす可能性がある。本研究ではまず遺伝学的な証明として、約1900名の当研究室患者コホートと、特発性心室細動例183名のエクソームデータなどから、14名のトランスポータ遺伝子に計8変異を見出した。これら患者の中には心電図QT時間の短縮を認めた。続いてプラスミドを作成し、培養細胞株に強制発現を行って生化学的検討を行ったところ、タンパクの局在に大きな変化はなかったが、ホールセルパッチクランプ法により変異体はトランスポータ機能を喪失していることが分かった。CRISPR/cas9ゲノム編集技術を用いてノックインマウスを作成したところ、突然死や心機能の低下は見られなかったが、ホモ個体は出生しないことが分かり、生体にとって重要な分子であることが改めて示唆された。続いてこのマウスを使い、吸入麻酔下で右室高頻度ペーシング刺激を行ったところヘテロノックインマウスでのみ多型性心室頻拍が誘導された。現在マウスの単離心筋細胞レベルの研究を行い、電気的特性を明らかにしようとしている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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