HOIL-1L遺伝子異常症患者の筋症、心筋症の発症機序の解明を目的とし研究を行なった。筋症については筋芽細胞C2C12とHOIL-1L遺伝子ノックアウトC2C12(C2C12-KO)を用い、心筋症の研究についてはHOIL-1L遺伝子異常症患者から作製したiPS細胞(HOIL-Pt-iPS)、HOIL-1L遺伝子をノックアウトしたiPS細胞(HOIL-KO- iPS)、コントロールiPS細胞を用いた。 まず筋症の研究について報告する。C2C12、C2C12-KOから骨格筋分化を誘導すると、C2C12-KOから分化した骨格筋は核形態や細胞サイズから形態的に未熟であり、骨格筋分化マーカー(MRF4)の発現も低下していた。分化骨格筋のRNAシークエンシング では、筋分化や筋収縮に関する遺伝子がC2C12-KO由来骨格筋で有意に低下していた。細胞周期解析ではC2C12-KO由来骨格筋で有意に細胞周期異常が起こっており、骨格筋の未分化性から脆弱骨格筋が発生する可能性が示唆され、筋症発症の原因と考えられた。 次にCon-iPS、HOIL-Pt-iPS、HOIL-KO-iPSを用いて心筋細胞分化について評価した。HOIL-Pt-iPS、HOIL-KO-iPSから分化した心筋細胞は核形態や細胞サイズから異常形態を有していた。細胞周期実験では、HOIL-Pt-iPS、HOIL-KO-iPSから分化した心筋細胞で有意にM期遅延を主とした細胞周期異常が起こっており、TUNEL染色や線維化マーカー(Serpine2)発現の評価から、心筋分化遅延、アポトーシスを主とした細胞死や細胞線維化が起こっていることが示唆され、これが心筋症発症の原因と考えられた。 HIOL-1L-KOマウスでは、明らかに心臓分化障害を有し、ホモKOでは心臓の発生を殆ど認めず、ヘテロKOにおいても心臓発生の遅延が有意に認められた。
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