研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(以下、肺高血圧症)は、肺小血管周囲の炎症および閉塞性病変の進展を特徴とするが、その機序については十分解明されていない。したがって、炎症誘導機構の分子機序解明と有効な治療戦略の開発が急務である。申請者は、肺高血圧症ラットモデルを用い、血行動態ストレスを起点とした炎症が肺血管閉塞性病変の進展の重要な機序であることを明らかにした (Abe K, et al. Cardiovasc Res 2016)。また、圧負荷右心不全疾患モデルにおいて、血行動態ストレスに曝された右室から放出された障害ミトコンドリアDNA(mtDNA)をリガンドとしたtool-like receptor 9(TLR9)の活性化と感染を伴わない炎症(無菌性炎症)が誘導されることを報告した(Yoshida K, Abe K, et al. Cardiovasc Res 2018)。本研究の目的は、肺高血圧症の肺小血管周囲の炎症および閉塞性病変の進展における炎症誘導の分子機構として、mtDNAに着目し、最終的にはTLR9を標的とした新たな難治性肺高血圧症の治療戦略の確立することである。 モノクロタリン誘発性肺高血圧症ラットモデルにおいて経時的な血中mtDNAマーカー(ATP3, COX4, ND17)の発現解析を行った。モノクロタリン投与1,3,7,14日後にかけて経時的に3種のマーカー上昇を認めた。モノクロタリン誘発性ラットモデルに対して、選択的TLR9阻害薬(E6446)の慢性投与を行い、肺動脈圧低下、閉塞性肺血管周囲の炎症抑制、生存曲線の改善を示すことができた。
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