研究課題/領域番号 |
20K08426
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井手 友美 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90380625)
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研究分担者 |
池田 昌隆 九州大学, 医学研究院, 特任助教 (10567382)
山田 健一 九州大学, 薬学研究院, 教授 (60346806)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心筋症 / 抗がん剤 / フェロトーシス / 脂質過酸化 |
研究実績の概要 |
背景および目的)アントラサイクリンによる心筋傷害は、蓄積性かつ不可逆性であり、その細胞毒性発現の機序については、諸説あるものの、その心筋障害の分子機序の全容は明らかになっておらず、その有効な治療方法については確立されていない。そこで本研究では、アントラサイクリン心筋症の分子学的機序の解明とその治療法の開発を目的として研究を進めている。 方法および結果)①ドキソルビシンによる心筋傷害モデルの確立:ドキソルビシン心筋症モデルマウスを作成した。 ②ドキソルビシン心筋症におけるフェロトーシスの役割の解明:ドキソルビシン心筋症においては、GPX4の発現が低下していることが明らかとなった。GPX4過剰発現マウスによるGPX4の増加ならびにフェロトーシス阻害剤の投与により、左室機能は有意に改善し、また心筋脂質過酸化を抑制した。一方、GPX4欠損マウスでは、左室機能のさらなる低下、脂質過酸化の増加を認めた。また、仔ラット心筋細胞を用いて、DOXにより細胞死が増加すること、これらは、GPX4の過剰発現ならびにフェロトーシス阻害剤(フェロスタチン)により有意に抑制した。さらに、阻害剤を用いた細胞死評価系を用いることで、フェロトーシスが、アポトーシスとは全く独立して細胞傷害に寄与するこを明らかにした。 ③DOX心筋症におけるフェロトーシス発症の分子機序の解明:ドキソルビシンによる心筋障害において、細胞内特にミトコンドリア内でFe2+が増加しており、Fe2+特異的キレート剤によって、フェロトーシスによる細胞死が抑制されるた。またミトコンドリアDNAの増加に伴い、ミトコンドリア内DOXは増加したことから、DOXがミトコンドリアDNAに直接インカレートすることによりミトコンドリアに集積すること、GPX4の低下とミトコンドリア内Fe2+の増加が、DOXによる心筋傷害機序であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに進捗し、特許申請、一部の結果の論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在、脂質過酸化反応系を用いたスクリーニング法(特許取得済み)によりフェロトーシスを阻害する薬剤が明らかにできている。それらの薬剤について、in vivo, in vitroにより、より安全で有効性が高い薬剤を同定(特許申請中)した。本薬剤を用いたDOX心筋症予防薬の開発のため、作用点を含めた基盤研究を行う予定である。
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