研究課題
フェロトーシスは鉄依存性に生じる細胞死として2012年にDixonらによって提唱されたプログラム細胞死である(Dixon SJ:Cell, 149:1060-1072, 2012) 。本基盤研究により、我々は、特にドキソルビシン(Dox)心毒性におけるフェロトーシスの役割、誘導分子機序について明らかにした。Doxをマウスに経静脈的に投与することで、心筋の収縮障害を生じ、Dox心筋症モデルを作製した。単離心筋細胞においてミトコンドリアDNA(mtDNA)のヘリカーゼであるTwinkleを過剰発現もしくはノックダウンすることによってmtDNAを増減させたところ、DOXのミトコンドリアへの集積量、過酸化脂質、そしてフェロトーシスがmtDNAの量に一致して変動した。 さらに心臓において約2倍量のmtDNAのコピー数を持つTwinkle過剰発現マウスではフェロトーシスがより顕著に誘導され、心臓収縮障害が有意に増悪した。以上のことから、DoxがmtDNA依存性に心筋に集積することが明らかとなった。次い、鉄がミトコンドリアに蓄積する機序としてヘム合成経路に着目した。心筋では、ドキソルビシン投与によりミトコンドリアにおけるヘム合成経路の律速段階であるアミノレブリン酸合成酵素(ALAS1)の発現低下を認めた。またそれに伴って、ヘム合成の低下、ミトコンドリア内の鉄の過剰状態、脂質過酸化の増加を認めた。5-アミノレブリン酸(5-ALA)の経口投与により、ヘム合成低下、鉄過剰、過酸化脂質の増加が抑制され、心機能の低下を抑制した。以上から5-ALAを用いてDOXにより障害されたヘム合成を正常化をさせ、ミトコンドリア鉄を消費することがフェロトーシスを標的としたDox心毒性の予防法になり得ること明らかにした。(Abe K, Ikeda M, Ide T:Sci. Signal, 2022)
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Sci Signal
巻: eabn8017 ページ: NA
10.1126/scisignal.abn8017
JACC Basic Transl Sci,
巻: 7 ページ: 800-819
10.1016/j.jacbts.2022.03.012