研究実績の概要 |
高血圧を基礎とする心血管病抑制は喫緊の課題である。特に、高血圧は心不全の基礎疾患として重要で有り、心収縮機能が保たれていても拡張機能障害が早期から生じるため血圧管理は極めて重要である。本研究では、高血圧の初期から低下することが知られている生理検査による血管内皮機能と血液検査によるエクソソームとして注目されているマイクロRNA(microRNA)を組み合わせ高血圧の病態としての新たなリスク層別化指標の探索を目指す。 令和4年度は前年度に引き続き、地域中核基幹病院である高木病院 高血圧・心不全センターを受診した未治療高血圧患者(約120名)について血流依存性血管拡張反応(FMD)検査による血管内皮機能と心不全指標の関係を調べた。FMD値は60歳未満男性において収縮期血圧、拡張期血圧、HbA1c 、60歳未満女性において脈圧、HbA1cとFMD値に負の相関がみられた。また、60歳未満の男女ともにEFは保たれていてもFMD値が低下しているとE/Aが低下しているという相関を認めた。以上の成績は、若年・中年期から高血圧患者では血管内皮機能が低下していること、心不全の前段階として血圧・血糖管理を行っていく必要があることを示唆する。 血液検査としてのmicroRNA測定については高血圧との関連が示唆されている候補であるmicroRNA21, microRNA126, microRNA155など数種類のmicroRNAの測定を行った。高血圧患者では健常者に比べmicroRNA126, microRNA155は低下していたが、microRNA21は健常者と差は認められなかった。microRNA21は年齢、腎機能、血管内皮機能との相関が認められ、増加から減少に転ずる可能性が示唆された。
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