研究課題
本研究では、カテーテルを用いてヒトiPS由来心筋球(Spheroid)を冠動脈内に投与し、その効果と安全性を評価する前臨床試験を行い、新しい心筋再生療法の検討、開発、重症心不全へのiPS細胞を用いた再生医療を具現化することを目的とした。まず、Spheroidの作製として、特殊培養皿を用いて大きさの異なるSpheroidを作製した。次に、カニクイザルを用いて単離心筋球(Single cells)、および直径50~6 0μm、80~100μm、100~150μmのSpheroidを、低用量(5×10^6)、中容量(1×10^7)、および高容量(3×10^7)で冠動脈内投与を行い、細胞生着について検討した。また、心機能評価は細胞投与前後での左室造影、および心臓超音波検査を用いて評価を行ったが、いずれの評価項目も統計学的有意差は認められなかった。心筋細胞の生着については、病理組織学的検査(HE染色、PSR染色)にて評価を行った。Single cells、および直径50~6 0μm、中容量のSpheroidの投与では移植細胞の生着は認められなかった。直径100~150μm、高容量、および直径80~100μm、中容量のSpheroid投与では、グラフトの生着が確認できたが、同時に左室前壁中隔に広範囲の梗塞巣が認められた。また、いずれの群でも異所性の心筋細胞生着や、腫瘍形成は認められなかった。以上の研究成果について、The Journal of Molecular and Cellular Cardiologyに論文発表を行った(Kobayashi H, Tohyama S, Kanazawa H, et al. J Mol Cell Cardiol. 2023 Jan;174:77-87.)。
すべて 2023
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J Mol Cell Cardiol.
巻: 174 ページ: 77-87
10.1016/j.yjmcc.2022.11.004.