本研究ではSemaphorin 6A(Sema6A)の線維化抑制作用に注目し、Sema6Aの心臓リモデリング抑制効果を検討、その作用機序を明らかにするための研究を行う。 申請者らはこれまで臓器線維化に注目して研究を行っており、線維化抑制作用を示す因子として肝線維化に伴い発現上昇するmiRNAの網羅的解析から線維化促進に働くmiR-214を同定、そのターゲット遺伝子として膜型セマフォリンファミリーの一つであるSema6Aを同定している。 Sema6Aが抑制するTGF-beta/Smad3経路は、心臓リモデリングを促進させるシグナルでもあり、我々はマウス心筋梗塞モデルを用い、Sema6Aの心筋梗塞後リモデリングへの影響を評価した。マウス心筋梗塞モデルにおいて浸透圧ポンプを用いSema6Aの細胞外ドメイン1-544aaを4週間持続皮下投与(2μg/4週)すると、生食投与群と比較し、生存率の改善を認めた。更に心筋梗塞8週間後の心臓超音波検査にて心拡大抑制、収縮力改善、心重量・肺重量低下、シリウスレッド染色では非梗塞領域の線維化抑制、リアルタイムPCRでは心筋での炎症・線維化・心肥大関連遺伝子発現抑制を認めた。更にSema6AのHis-212をAsnに置き換えた変異体(H212N)は受容体PlxnA2に対するシグナル経路に通常よりも活性を持つことを明らかにしている。同様に浸透圧ポンプにてSema6A H212N変異体を心筋梗塞モデルに4週間持続皮下投与(2μg/4週)、生食投与群と比較し、H212N変異体は心拡大抑制、収縮力改善、心重量・肺重量低下(図5)がみられた。以上より、Sema6AはPlxnA2に作用し、心臓リモデリングの抑制に関与している可能性があることを明らかにした。
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