研究課題
成人先天性心疾患(以下、Adult congenital heart disease:ACHD )症例では、成人期の手術後に血行動態変化や身体的ストレスに伴い重症不整脈による重篤な心血管イベント(Major adverse cardiac event: MACE)を生じる症例が多いが、現時点では発症予測が困難である。我々は心電図の新しい指標であるQRS波形の分裂電位(分裂性QRS電位)に注目し、各種心疾患における心事故発生リスクを報告してきた。2014年に岡山大学循環器内科が中心となりACHDセンターを設立し、各科の専門医と協力し、集学的治療を行っている。センター設立後は、成人期に弁形態変化や心不全のため再手術が必要となる複雑症例の割合が多くなり、より重症度の予測が必要となった。岡山大学心臓血管外科は、約30年前より世界有数の小児先天性心疾患治療(年間200例以上)の実績があり、現在は年々成人例になるACHD症例が急速に増加している。ACHD症例に対する開胸手術を施行している施設は国内でも数施設しかない。その際に心外膜の電気生理学的マッピングを施行し、術中の異常所見とその他の非侵襲的指標と組み合わせることでSCDのより正確な予後予測を確立することは、世界では例がなく、岡山大学独自の取り組みであると考える。また、研究結果によって、他の術後症例へのフィードバックも可能になると思われる。また、現在勤務している岡山医療センターは、世小児科は国内有数の周産期センターを有しており、症例数も随一である。今までは小児循環器内科医が非常勤であったため、循環器領域、特に不整脈分野への介入が困難であったが、自身が赴任後は紹介症例が増えている。そのためACHD症例についても、今後、成人循環器内科がフォローできる体制を構築し、研究の幅が広がることが期待できる。
4: 遅れている
大きな理由として2つあげられる。1つは、研究者の2020年4月に異動である。異動決定が急であったため、事前の患者共有システムが構築できていなかった。また、昨今の個人情報保護法の問題があり、必要な倫理委員会等の書類手続きに時間を要している。2つ目は、コロナ禍である。入院症例の抑制及び病院間の医師の移動も困難となり情報取集が不可能な状態に陥った。適応症例のデータベース構築が初年度の最大の目標で、そこから心電図等の資料を集積し、PQ,QRS,QT,RR,またfragmented QRS等のそれぞれの指標を目視で解析予定であったが困難を極めている。ここで、上記以外の進捗に影響を及ぼす問題点がいくつか挙げる。①15年以上前の症例もあり紙媒体でのカルテからの集積作業となるため、実資料の欠損が存在する。②症例が遠方の方は外来中断も多く、予後調査には電話確認を要する。③昨今の個人情報管理の問題があり、同意取得が必要だが不可能な症例が多く存在する。
対象患者の変更を検討している。理由として、コロナ禍の今後の経過が不明であり、病院間の往来にも支障があること、また、対象症例自体が手術延期や部外者立ち入り禁止などの傾向になっており研究推進が困難になっていることがあげられる。岡山医療センターは世界有数の肺高血圧症の治療実績がある。特に慢性血栓性肺塞栓症は診断技術の向上で症例数は増えている。加えて、慢性血栓性肺塞栓症はACHDと同様に予後に不整脈が大きく関与している。そのため、慢性血栓性肺塞栓症を始めとする肺高血圧症例の心電図、不整脈観点からの予後予測を検討することはACHD同様に大変意義深いことと考える。そのような症例の電気静学的スコアリング化も検討し、データ化することを検討している。
コロナ禍により会議がWebとなり出張経費の支出が必要でなかった。また人的経費も院内への訪問抑制等で人材確保が不可能であった。
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