研究課題
心不全病態形成におけるオートファジーの心保護的機能を発見報告してきた。一部の神経変性疾患においてオートファジーコアタンパク質の変異の関与が報告されたが(2021NEJM)、ヒト心不全発症における直接的関与については未だに全く報告がない。私たちはリソソーム酵素であるDNase2の欠損によるオートファジー性分解完遂の阻害が心不全を誘導することに着目し、本研究課題では、『心不全はリソソーム病の一つである』 との仮説を立てた。本年度はオートファジー抑制因子Rubiconの心不全発症における機能解析を終了し、論文報告した(Sci Rep. 2022;12(1):41)。Rubiconは心負荷時におけるベータ受容体のリサイクリングに関与しており、同欠損によって圧負荷後のベータ受容体内在化後の再発現が抑制され、結果的に心不全が誘導されることが明らかとなった。すなわちRubiconは心保護的に機能していることを解明した。また、心不全病態モデルとして新たにo-リングを用いた簡便かつ安定的な圧負荷モデルを開発し、論文報告した(Sci Rep. 2022;12(1):85)。このモデルでは横行大動脈にo-リングを用いることで、安定的な心肥大誘導並びに心不全誘導を行えるものである。この新たな心肥大および心不全病態モデル動物組織を用いて、TFEBなどのリソソーム関連因子を含めた遺伝子発現についてRNA-seq網羅的解析を実施し、心肥大から心不全への以降に際してTFEB発現量が変動することが明らかとなった。また同解析データを用いて、オートファジーおよびmitopahgyに関するパスウェイ解析も実施した。
2: おおむね順調に進展している
心不全病態モデル動物およびヒト心不全における遺伝発現解析を実施し、リソソーム関連因子を含めた網羅的解析を実施した。心不全発症における重要なリソソーム内酵素の候補の一つと考えられるDNaseII発現制御について、その制御分子機構の網羅的スクリーニングおよび候補分子の同定は完了した。また新たな心不全病態モデルの開発にも成功し、このモデル組織を用いた新規の網羅的解析も実施した。さらに、オートファジー関連因子Rubiconが圧負荷心不全病態において、ベータ受容体リサイクリングを誘導することで保護的に機能していることを解明した。
リソソーム関連因子の心不全病態における変化に関する解析はほぼ完了した。今後は、空間的遺伝子発現解析を実施し、心筋におけるリソソーム機能の変化がどのような心筋から出現するかについての解明を目指す。
網羅的解析の結果必要となった、空間的遺伝子解析を次年度に実施するため。また、心不全進展に関わる網羅的解析が順調に進んだが、gain-of-functionおよびloss-of-function解析用ウイルスベクター作成や、遺伝子改変動物解析に充てる予算額が翌年度への繰越となったため。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Sci Rep.
巻: 12 ページ: 85
10.1038/s41598-021-04096-9.
巻: 12 ページ: 41
10.1038/s41598-021-03920-6.