研究課題/領域番号 |
20K08450
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
辻 幸臣 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (60432217)
|
研究分担者 |
山崎 正俊 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (30627328)
常山 幸一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10293341)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 電気的ストーム / 心筋代謝リモデリング |
研究実績の概要 |
反復する心室頻拍・細動(VT/VF)に対して除細動器(ICD)が頻回作動する重篤な不整脈状態を電気的ストームと呼ぶ。電気的ストームを経験した患者の予後は不良で、その大部分が心不全死する。ICDのショック通電による心筋障害が寄与すると考えられているが、その分子機序をよくわかっていない。当該年度、電気的ストーム家兎モデルの全遺伝子発現のプロファイリングを作成した。電気的ストーム家兎5羽、健常家兎3羽の右室(RV)・心室中隔(SEP)・左室(LV)心筋組織からRNAを抽出、Fragmented/Labeled cDNA作製後、GeneChipTM Rabbit Gene 1.0 ST Arrayキット(ThermoFisher)を用いて発現解析を行った。電気的ストーム家兎と健常家兎との比較にて、2倍以上、または0.5倍以下の発現変化を示した遺伝子数は各々、RV心筋で94と57, SEP心筋で98と29, LV心筋で76と39であった。機能アノテーションチャートにて、「免疫」「細胞外マトリックス」「インテグリン結合」「ラミニン結合」「分泌蛋白質」などが共通用語として検出された。±5倍以上の発現変動を示した遺伝子10個、そのうちPDK4とacyl-CoA desaturaseが±10倍以上であった。PDK4の変化は、心室中隔で顕著(10.58倍)であった。Acyl-CoA desaturaseは、RVとLV心筋で著しく(-19, -40倍)減少する一方で、SEP心筋で変化はなかった。心筋局所には遺伝子発現プロファイリングの相違があり、局所依存性の心筋代謝リモデリングが電気的ストームの発生基質に重要な役割を果たしていることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画の実施が遅延している主な理由として、電気的ストーム家兎モデルの作成・準備に少なくとも3か月という長い期間を要すること等が挙げられる。また、代表者の異動に伴う準備等のため、課題は遅延せざるを得ない状況にあった。
|
今後の研究の推進方策 |
遺伝子発現変化の検討継続に加え、SEP心筋の電気生理学的特性変化がRVやLV心筋と異なるか否かを検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度初めの異動のための準備を行ったため、実験を一時的に中断せざるを得なかった。繰越金は、次年度物品費購入費に充てる。
|