研究課題/領域番号 |
20K08451
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
海北 幸一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (30346978)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 血栓形成能 / 経カテーテル的大動脈弁留置 / T-TAS / 無症候性血栓弁 |
研究実績の概要 |
重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は、予後の改善が期待される画期的治療法であるが、周術期血栓性および出血性合併症を予防するため、至適抗血栓療法が重要となる。現在、作用機序の異なる多数の抗血栓薬が登場しているため、TAVI後の最適な抗血栓薬の選択には周術期血栓形成能の詳細な把握が必要となるが、現行のモダリティでの評価は困難である。本研究ではTAVI後の最適な抗血栓薬を選択するため、血栓形成能を総合的に解析できるTotal Thrombus-Formation Analysis System (T-TAS)を用いてTAVI周術期の血栓形成能を定量解析し、無症候性血栓弁の指標である造影CT上の最大低輝度大動脈弁尖肥厚、Computational fluid dynamicsによる血管壁ずり応力解析、von Willebrand 因子マルチマー解析を施行し、血栓弁の発症機序、寄与因子を解明することを目的とした。本研究により、TAVI弁血栓形成に影響を及ぼす病態メカニズムが解明され、TAVI後の至適抗血栓療法の確立に寄与することが期待される。当院倫理委員会へ当臨床研究を申請し、研究施行が受理されたため、研究を開始した。現在5例の患者登録が有り、プロトコルに従って、T-TAS測定、TAVI前後のCT検査、VWF高分子量マルチマー解析のための血漿サンプリングの実施、TAVI周術期の血栓性および出血性合併症チェックのための入院および退院後の外来経過観察が施行されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当院倫理委員会へ臨床研究申請書を提出し、研究施行が承認されたため、研究を開始した。対象は外科手術高リスクのASに対しTAVIを施行する予定の患者で目標症例数は100例で設定している。的確事項を確認後、文書にて同意を取得すし、研究施行している。現在5例の患者登録が有り、プロトコルに従って、登録時、TAVI前日、1週間後、3ヶ月後に病棟もしくは外来にて採血、検査を施行している。評価項目については、①T-TAS を用いた総合的血栓形成能の評価として、TAVI前日、1週間後、3ヶ月後の血液サンプル(全血)でT-TAS値(AR-AUC, PL-AUC)を測定し、血栓形成能の経時的変化を定量的に評価する。② TAVI前後の大動脈造影CT検査による最大低輝度弁尖肥厚(Maximal leaflet thickness, mm)の評価として、TAVI術後1週間後と3ヵ月後の最大低輝度弁尖肥厚を測定し、TAVI 介入前後での変化を比較検討し、無症候性弁血栓の性状を評価する。③ VWF高分子量マルチマー解析として、TAVI前、術後1週間後と3ヵ月後の血漿サンプルを用いてVWFマルチマー解析を行う。さらに、⑤TAVI周術期の血栓性および出血性合併症チェックのための入院および退院後の外来経過観察が施行されており、周術期血栓性および出血性合併症の予測における各種マーカーの検討がなされている。現在のところ、経過観察にて大きな合併症無く経過している。倫理委員会からの研究承認に時間を要したため、当研究の開始が遅れている状況であるが、今後症例登録を促進していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
当研究は、倫理委員会からの研究承認に時間を要したため、当研究の症例登録が遅れている状況であるが、今後積極的なスクリーニングを実施し、適合症例を漏らさないよう努めていく予定である。また、関連施設からのTAVI症例の積極的紹介を推進していくべく啓発活動に努める。当院でのTAVI症例は令和2年で50例であり、前年より増加傾向であること、またTAVI後のあらゆる抗血栓療法施行患者に対して登録対象になるため、除外症例も少なく、今後登録は促進できるものと考えている。また、登録された患者に対しては、万全なTAVIの施行と退院後の外来加療、諸検査が滞らないよう、事前に登録患者に外来受診日、検査内容について通達し、徹底したスケジュールの遂行に努める。また、外来観察時に、詳細な血栓性および出血性合併症の聴取、確認を行うことにより、経時的に行うT-TASパラメータ(AR-AUC、PL-AUC)測定、大動脈造影CT検査による最大低輝度弁尖肥厚、およびVWF高分子量マルチマー解析結果との関連性がロジスティック解析モデルによる多変量解析にて明確になるよう努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:当研究は、倫理委員会からの研究承認に時間を要したため、当研究の症例登録が遅れている状況であることが、次年度使用額が生じた理由である。令和3年度に合わせて使用していく予定である。
使用計画:令和3年度の研究費に加えて使用していく。今後積極的なスクリーニングを実施し、適合症例を漏らさないよう努めていく予定である。関連施設からのTAVI症例の積極的紹介を推進していくべく啓発活動に努める。当院でのTAVI症例は前年より増加傾向であること、またTAVI後のあらゆる抗血栓療法施行患者に対して登録対象になるため、除外症例も少なく、今後登録は促進できるものと考えている。
|