重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は、予後の改善が期待される画期的治療法であるが、TAVI周術期には、TAVI生体弁の血栓付着および出血性合併症を予防するため、至適抗血栓療法が重要となる。TAVI後の最適な抗血栓薬の選択には周術期血栓形成能の詳細な把握が必要となるが、現行のモダリティでの評価は困難である。本研究ではTAVI後の最適な抗血栓薬を選択するため、血栓形成能を総合的に解析できるTotal Thrombus-Formation Analysis System (T-TAS)を用いてTAVI周術期の血栓形成能を定量解析し、無症候性血栓弁の指標である造影CT上の最大低輝度大動脈弁尖肥厚、Computational fluid dynamicsによる血管壁ずり応力解析、von Willebrand 因子マルチマー解析を施行し、血栓弁の発症機序、寄与因子を解明することを目的とした。当院倫理委員会へ当臨床研究を申請し、研究施行が受理されたため、研究を開始した。コロナ禍の影響により症例登録が遅れ、現在36例が登録され研究が進行している。研究プロトコルに従って、T-TAS測定、TAVI前後のCT検査、VWF高分子量マルチマー解析のための血漿サンプリングの実施、TAVI周術期の血栓性および出血性合併症チェックのための入院および退院後の外来経過観察が施行された。36例の内23例でCT検査の解析が終了しており、23例中4例(17%)にTAVI後1週間時点で血栓弁が発生しており、現在残りの症例のCT追加解析、及び血栓弁発生やMaximum leaflet thicknessに寄与する因子の探索や血栓性・出血性合併症発生の追跡調査を行った。現在最終解析中である。
|