研究課題/領域番号 |
20K08452
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
神津 英至 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60596609)
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研究分担者 |
久野 篤史 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30468079)
矢野 俊之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40444913)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心筋代謝 / 心不全 / 糖尿病 / アミノ酸 / 核酸 / AMP deaminase |
研究実績の概要 |
ラット心筋におけるプロテオミクス解析において、AMPD3と分枝鎖アミノ酸(BCAA)の代謝律速酵素である分枝鎖α-ケト酸脱水素酵素(BCKDH)が直接結合していることを同定し、BCAA代謝の制御にAMPD3が関与していることを同定した。さらに細胞分画実験において、この結合が主に小胞体分画で見られることを同定し、心筋においてBCAAがミトコンドリア外でも代謝されている可能性を見出した。AMPD3-BCKDH結合は新生ラット初代心筋細胞(NRCM)、ラット心臓筋芽細胞(H9c2)、ヒト胎児腎細胞293(HEK293)でも見られ、細胞に共通した代謝機構であることが示唆された。In vitroにて遺伝的BCKDH発現抑制はAMPD3の発現を亢進させ、2型糖尿病モデルラット(OLETF)心で見られたBCKDH-AMPD3結合不均衡を再現した。In vitroにてAMPD3の過剰発現はBCKDH活性を上昇させ、逆に発現抑制は同活性を低下させることから、AMPD3はBCKDH活性を正に制御していることが示唆された。 NRCMにおいて、遺伝的BCKDH発現抑制は脂肪酸負荷時の脂肪滴合成能障害および、ミトコンドリアでの脂肪酸酸化能を低下させたが、グルコース酸化能には影響を与えなかった。以上より、心筋細胞においてBCAA代謝が脂肪酸代謝に対して促進的に働いており、BCAA代謝障害は糖尿病における心筋代謝障害に寄与している可能性が考えられた。 また臨床研究では心不全症例において血中アミノ酸プロファイリングを行い、骨格筋分解マーカーである3-methylhistidineの上昇および、BCAAであるバリンの低下が、既存の危険因子と独立して予後を予測することを見出し、論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画1(アミノ酸代謝と核酸代謝の分子機構連関の解明)については、心筋においてミトコンドリア外のBCAA代謝にAMPD3が関与していることを同定し、さらに心筋脂肪酸代謝におけるBCAA代謝の重要性を明らかにした。これらの制御が糖尿病心で障害されていることを同定した。研究計画3(心不全臨床例における心筋アミノ酸代謝の変化の解明)については、末梢血でのアミノ酸プロファイリングの有用性を論文報告した。冠静脈洞採血が行えた心不全症例の登録も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はAMPD3がBCKDH活性を制御する分子機序、およびBCAA代謝不全がAMPD3の発現を上昇させる上流機序について着目して解析する。研究計画2(心不全モデル動物におけるアミノ酸代謝をターゲットとした治療の効果) については、AMPD3ノックアウトマウスに心不全モデルを誘導し、表現型解析を行う予定である。AMPD3ノックアウトマウスは樹立済みであり、現在繁殖中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、物品の流通が滞ったことと、各種学会が開催中止やweb開催となったため、物品費・旅費等の使用が当初の計画よ り少なかった。余剰分は次年度に、転写装置など老朽化した備品の買い替え、抗体や試薬などの消耗品に充当する予定で ある。
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