研究課題/領域番号 |
20K08462
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
岩田 裕子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80171908)
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研究分担者 |
泉 知里 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (70768100)
伊藤 慎 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 室長 (20796560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心不全 |
研究実績の概要 |
ヒト心筋症及び心不全に対する新規治療法を開発するため、それらの病態的特徴である持 的Ca2+濃度上昇に着目し、有力な候補蛋白質と考えられているメカノセンサーチャネルTRPV2の生理的役割、病態的意義を明確にすると共にTRPV2が心筋症 心不全の有力な治療標的になることを確定することが必要である。昨年度は野生型マウス及び心筋特異的遺伝子改変マウスのランゲンドルフ心筋虚血再灌流障害モデル心筋を用いてTRPV2が虚血再灌流時の心筋変性に重要な役割を果たしていること、心筋梗塞などの虚血性心疾患の治療標的になる可能性を示唆した。今年度はマウス大動脈狭窄モデルにおけるTRPV2の役割を検討した。野生型マウスに大動脈狭窄すると1週間後に心筋収縮能の指標fractional shorteningが30%になり8週後にはその約半分になった。大動脈狭窄1週間後から毎週TRPV2阻害抗体を皮下注したマウスは8週後に約25%と収縮能の低下が阻止された。大動脈狭窄により心筋TRPV2の細胞膜発現が増加したが、阻害抗体でその発現は抑制された。この結果は一般心不全においてもTRPV2が重要な役割を果たしていることを示唆した。阻害抗体はヒトTRPV2には結合しないため、ヒトTRPV2を阻害するトラニラスト以外のものを探索し抗アレルギー薬NK-4がトラニラストより低濃度でヒトTRPV2活性を阻害することを明らかにした。NK-4は肥満細胞からの脱顆粒抑制作用も有すること、抗アレルギー薬の中でエピナスチン塩酸塩(アレジオン)とフェキソフェナジン塩酸塩(アレグラ)のTRPV2活性阻害及び脱顆粒抑制作用を調べたところアレジオンは両作用を有するがアレグラは両作用ともないことが明らかになった。またバイオバンク試料を用いた研究も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPV2の病態的意義の確定を心不全モデルマウスを用いて明らかにできた。 また阻害抗体、阻害薬についても順調に検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
バイオバンク試料を用いた研究をさらに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の実験に必要な経費として繰越します。
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