研究課題/領域番号 |
20K08463
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
小川 愛子 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター(臨床研究部), 分子病態研究室長 (40572748)
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研究分担者 |
松原 広己 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター(臨床研究部), 副院長 (70252955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 / 肺動脈平滑筋細胞 / ずり応力 / マイクロ流路 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,慢性塞栓性肺高血圧症(CTEPH)における異常なずり応力が肺動脈平滑筋細胞(PASMC)の過剰増殖を惹起し,病態進展へと寄与する機序の解析を行うことである.指定難病であるCTEPHの病理組織学的特徴は,PASMCの過剰増殖等による血管内腔の狭小化・閉塞である.このような血管病変は,血管内の「異常な流れ」,特に高いずり応力を来すと考えられるが,臨床実測値は存在しない.異常なずり応力の病態進展への寄与も考えられているが,具体的な機序については未解明である.以上の状況を打開すべく,本研究計画ではCTEPH患者におけるずり応力の臨床実測値を得て,こうした値を再現する灌流培養モデルを確立し,解析することを予定している.実際,R2年度には,複数のCTEPH患者における血管病変においてずり応力を実測した(投稿準備中).また,CTEPH患者由来PASMCを灌流培養し,実測したずり応力を負荷するマイクロ流路系の確立にも成功した.さらに,CTEPH患者由来血清の解析も進め,患者血清において血小板由来マイクロパーティクルが増加していることを明らかにし,報告した(Ogawa A et al. Thromb Res 2020)他,患者由来PASMCに立体培養を応用し,肺動脈中膜肥厚をin vitroにおいて再現する技術を確立した(Morii C et al. Front Bioeng Biotechnol 2020).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,本研究の初年度であるR2年度にはCTEPH患者におけるずり応力の実測および流路の確立を実施することを予定しており,いずれも達成したため.さらにR2年度後半からは流路の解析および患者血清・病理標本の解析を予定していたが,流路については解析に着手済みであり,患者血清の解析については既に論文一報を発表済み(Ogawa A et al. Thromb Res 2020)の他,さらに一報を投稿準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した,CTEPH患者におけるずり応力の実測値を再現するマイクロ流路の解析を進めるとともに,患者由来血清・病理組織の解析を行う.具体的には,異常ずり応力を負荷したマイクロ流路中PASMCの遺伝子発現変化をRT-qPCRにより,タンパク発現変化をウェスタンブロットやELISAにより解析する.とりわけ炎症シグナルに着目する.並行して,これら因子の血清中の量をELISA等で測定するとともに,病理標本においても染色により発現量を確認する.以上を通じ,マイクロ流路での知見と臨床的知見を相互参照しながら積み重ね,異常なずり応力がCTEPHの病態進展において果たす役割を明らかにしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していたより,CTEPH患者におけるずり応力の臨床的実測および流路確立が順調に進んだことに加え,コロナ禍の影響により次年度使用額が生じた.R3年度に予定している,マイクロ流路の解析や患者血清・病理組織の解析に必要な試薬や消耗品類の購入に充て,効率的に解析・検討を推進していく予定である.
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