スプライシング制御因子RBM20の変異はその機能喪失によりタイチン(TTN)遺伝子などの標的遺伝子のスプライシング異常を介して拡張型心筋症(DCM)を生じるとされてきたが、我々はRBM20変異によるDCM症例において変異が集中するRSRSP配列がRBM20の核移行に重要であり、RSRSP配列の変異はRBM20の核移行能の喪失をもたらし細胞質において凝集体を形成し機能獲得することがDCM発症やその不整脈原性(特に心房細動)に重要であることを報告してきた。昨年度までに変異型RBM20が細胞質においてRNA顆粒を形成しP-bodyと共局在している可能性が示唆されていたが、当該年度において変異型RBM20に対して共免疫沈降を行い、得られたタンパク質に関して網羅的解析を行ったところ、DDX6をはじめとしたP-bodyマーカーだけでなくP-bodyにおいて作用すると報告されている脱アデニル化、脱キャップ反応やmiRNAによる遺伝子抑制反応などRNA分解に関わるタンパク質群と変異型RBM20が相互作用を生じていると考えられた。 また、スプライシング機能は保持されたまま変異型RBM20を心房特異的に発現するマウスを作成したところ、変異型RBM20はスプライシング機能異常を介さずに不整脈原性を呈することを見出した。RBM20変異による心臓病態は細胞質に存在する変異型RBM20によるRNA顆粒が、従来考えられてきたスプライシング制御異常とは異なる機序(機能獲得)で病態形成に寄与し、特にRNA代謝の異常を来している可能性が示唆された。
|