研究課題/領域番号 |
20K08473
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
伊藤 英樹 広島大学, 病院(医), 教授 (30402738)
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研究分担者 |
竹島 浩 京都大学, 薬学研究科, 教授 (70212024)
加藤 浩一 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70736983)
堀江 稔 滋賀医科大学, アジア疫学研究センター, 特任教授 (90183938) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リアノジン受容体 / 心室細動 / シミュレーション / 突然死 |
研究実績の概要 |
特発性心室細動の発症に機能喪失型リアノジン受容体が関連していることを報告している(Fujii Y, et al. Heart Rhythm 2017)。本病態の基礎的メカニズムの解明のため、in silico解析を実施した。心筋興奮収縮連関に関連する心筋細胞のin silicoモデル(Gaur N, et al. Biophys J 2011)を導入し、Ca動態の観察を行った。機能喪失型リアノジン受容体はリアノジン受容体の開口率が0になるよう遷移係数を調節した。この設定下ではリアノジン受容体からのCa放出は抑制されるものの、筋小胞体からのCa放出は残存し、この現象にはCa leakが関連していた。store-overload-induced Ca release(SOICR)が著しく障害された状態が観察されたが、頻拍ペーシングの状況設定を行うと、筋小胞体からのCa放出がむしろ増加するという現象がみられた。Gaurらの心筋細胞モデルには小胞体からのCa放出にリアノジン受容体以外の蛋白質が設定されており、研究分担者である竹島らが発見している蛋白質群が候補に挙がることも推定された。これらの結果は第67回日本不整脈心電学会学術集会で発表した(Enhanced Ca2+ leakage from the network sarcoplasmic reticulum associated with RyR2 with a loss of function mutation: a simulation study)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋細胞のCaダイナミクスを観察可能な研究環境を設定し、in silicoにおける解析スピードが向上した。
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今後の研究の推進方策 |
機能喪失型リアノジン受容体の原因であるRyR2遺伝子変異が特発性心室細動の一亜型であるshort-coupled variants of torsades de pointesに同定されたことを2017年に報告した(Fujii Y, et al. Heart Rhythm 2017)。short-coupled variants of torsades de pointesの原因となる早期後脱分極の発生機序を解明する。2022年にHiroseらは機能喪失型リアノジン受容体の一表現型としてQT延長を報告した(Europace 2022)。細胞膜に発現するL型CaチャネルのCa依存性不活性化がQT延長の表現型に関与していることが考えられ、細胞内Ca動態の変化との関連をin silicoで解析する。また、QT延長症候群に同定されたL型Caチャネルの不活性化様式の変化が筋小胞体蛋白の動態に与える影響についても調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症に対する県・大学の対策に従い、出張の回数が減じたため、次年度使用額が生じた。本年度は関連学会が現地で開催される予定であり、日本不整脈心電学会や日本循環器学会に現地参加する意向である。また、研究の進捗状況や今後の展開について議論するために、分担研究者と面会する予定である。
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