研究課題
本研究の目的は、健診でみつかるLDL-C高値の小学生から家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia: FH)患者を見分ける診断基準作成のために必要な科学的エビデンスの集積を図り、診断基準を作成することである。小児生活習慣病予防健診で、下記の3条件をみたす小児、1)小児生活習慣病予防健診でLDL-C値≧140mg/dLを示す小児、2)続発性(二次性)高脂血症が除外される小児、3)香川県下の4医療機関(香川大学医学部附属病院、香川県県立中央病院、四国こどもとおとなの医療センター、三豊総合病院)を受診し、研究参加に書面にて同意(小児の場合、両親のいずれかが代諾者)した小児、およびリバースカスケードで高LDL-C血症を示す親を研究対象として、説明文書を使用して書面による同意を得た。その後、遺伝学的検査のため、研究対象者より採血(10 mL)を実施した。香川大学医学部附属病院以外の施設で採取された遺伝学的検査用血液は香川大学医学部附属病院に冷蔵で郵送した。香川大学でDNA抽出後、金沢大学に送付し、次世代シークエンサー(数千から数百万ものDNAの塩基配列を高速で解読する事が可能な基盤技術。複数個体を同時に配列決定できるなど高度かつ高速な処理が可能。)を用いた候補遺伝子パネル解析(FH関連遺伝子変異を調査)を実施した。現在、実施した人数は、FH疑いの小児90人、およびその両親28人。同時に臨床所見を確認し、詳細な家族歴を聴取、記録した。また、候補遺伝子パネル解析結果が得られた67症例では、既存の診断基準による診断結果では小児19人、両親13人が新規FHと診断された。さらに、遺伝学的検査による診断結果では小児28人が新規FHと診断された。
2: おおむね順調に進展している
新新型コロナ感染症の影響で、香川県下全ての小学校において、小児生活習慣病予防健診の実施が延期となり症例蓄積が遅延した。しかし、小児生活習慣病予防健診が順次再開して、症例蓄積を継続している。
健診スクリーニングにおいて高LDL-C血症を示した小児のうち、下記の3つの診断基準を用いた場合に、FHと診断された人数を検討するために、症例の蓄積を継続し、健診スクリーニングにおける最適な日本人小児FH診断基準作成を検討する。1)「LDL-Cカットオフ値 95パーセンタイル(140 mg/dL)以上+家族歴」、2)「LDL-Cカットオフ値 95パーセンタイル(140 mg/dL)以上+FH関連遺伝子変異陽性」、3)「LDL-Cカットオフ値 99パーセンタイル(170 mg/dL)以上」
新型コロナ感染症の影響により、2020年度の小児生活習慣予防検診の実施が大幅に遅れ、研究対象者の登録が遅れた。そのため、研究実施の症例数が予定より少なくなった。来年度は小児生活習慣予防検診の実施は通常通り行われる予定。そのため、症例蓄積が進み、遺伝子検査の解析結果を継続して実施する。
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J Atheroscler Thromb
巻: 28 ページ: In press
10.5551/jat.RV17050