研究実績の概要 |
香川県では、2012年以降、毎年、小児生活習慣病予防健診(以下、香川小児健診)が実施され、子ども達が自ら健康を考える力をつける貴重な教育の機会になっています。本健診では、県下の小学4年生(約8,000名)を対象として、学校で採血を行い、LDL-Cなどの項目を含む血液検査が実施されています。高い実施率(90%以上)を実現しており、香川小児健診は、脂質ユニバーサルスクリーニングとみなすことができます。生下時よりLDL-C高値を示す家族性高コレステロール血症(FH)は300人に1人の高い頻度で認められ、心筋梗塞などの冠動脈疾患発症率は一般人より10倍以上高いことが知られていますが、早期診断と早期治療で心筋梗塞を予防することが期待できます。香川県では、行政、医師会、アカデミアが連携し、香川小児健診を起点とする国内最大規模の「小児FHスクリーニング体制」が構築されました。小児FHの早期診断により、動脈硬化進展前に治療を開始できます。さらに、FHは常染色体顕性遺伝であるため、こどもがFHであれば、両親のいずれかがFHです。リバースカスケードスクリーニングによる親FH(40歳代)の診断により、親FHは冠動脈疾患発症前に治療を開始することができます。そのため、小児FHスクリーニングは、FHの親子ともに大きなメリットをもたらすことが期待できます(図)。これまで、FH親子400名以上を診断され、香川県でのFH診断率は10%を超えています。また、香川で得られた科学的エビデンスは、「小児FH診療ガイドライン2022」の診断基準にも大きく反映されました。さらに、小児FHスクリーニング実施にともなう増分費用効果比は約15万円/1QALYであり、新薬導入の基準となる500万円/1QALYを大幅に下回っており、小児FHスクリーニングは医療経済的にも優れていることを示しました。
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