研究課題/領域番号 |
20K08477
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宮田 昌明 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00347113)
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研究分担者 |
池田 義之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (00573023)
大石 充 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50335345)
桶谷 直也 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (70598010)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 急性心筋梗塞 / 腸内細菌叢 / 口腔内細菌叢 |
研究実績の概要 |
第1の目的は、急性心筋梗塞における口腔細菌叢と腸内細菌叢のクロストークを検討し、動脈硬化との関連を明らかにすることである。今までに急性心筋梗塞患者において歯周病菌と腸内細菌叢を同時に検討した報告はなく、歯周病菌と腸内細菌叢がクロストークし動脈硬化に関与することが明らかになれば、新たなエビデンスの構築とともに動脈硬化性疾患に対する歯周病や腸内細菌の重要性を社会に啓発することが出来る。第2の目的は、歯周病治療や腸内細菌叢介入の治療効果を検討し、新規治療法の開発を目指すことにある。整腸剤として用いられる宮入菌(Clostridium butyricum)は酪酸菌であり、善玉菌による有害菌増殖抑制作用を期待して、急性心筋梗塞患者と動脈硬化モデルマウスにおいて宮入菌による腸内細菌叢介入でマクロファージの活性化、炎症性サイトカイン、動脈硬化の進展抑制作用を検討し、動脈硬化の新たな治療法の開発を目指す。 本研究では以下の前向き横断研究と前向き縦断観察研究と動物実験を行う。 ①AMI患者において口腔内細菌叢(歯周病菌)と腸内細菌叢のクロストークを検討し、炎症性サイトカインや我々が独自に開発した活性化マクロファージの指標である可溶性葉酸受容体β(FRβ)や血管機能との関連を横断的研究で検討する。 ②上記AMI患者において歯周病治療あるいは整腸剤におる腸内細菌叢介入を行い、8か月後に歯周病菌と腸内細菌叢検査、冠動脈造影検査、血管機能検査、炎症性サイトカインや可溶性FR-βを再測定して治療介入の効果を前向き研究で検討する。 ③動脈硬化モデルマウスのアポ蛋白E欠損マウスに歯周病菌を口腔感染させ、動脈硬化進展への影響を検討するとともに腸内細菌叢介入の効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究申請書作成当時は、研究代表者が鹿児島市立病院に勤務しており、臨床研究は鹿児島市立病院で行う予定であった。しかし、2020年4月に鹿児島市立病院から鹿児島大学医学部保健学科に異動になり、講義とその準備のための教育業務に時間を割かれ、本研究課題の遂行に支障を来たした。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、4月~5月は臨床研究が非常に困難な状況であった。しかし、鹿児島市立病院で行う予定であったAMI患者の口腔細菌叢 腸内細菌叢の研究を行うべく、鹿児島大学の倫理委員会に研究申請して、承認された。現在、口腔細菌叢と腸内細菌叢の検査を行う業者を選定しており、業者が確定し次第、検体採取に取り掛かる予定である。なお、当初予定していた整腸剤であるミヤB細粒による腸内細菌叢介入試験に関しては、胃腸症状のない人への投与が問題になり、胃腸症状のある症例において、ミヤB細粒投与による変化をみる観察研究とした。また、歯周病は当初より、歯周病のある患者での歯周病治療希望者において歯周病治療を行い、歯周病治療を希望しない群との比較とした。 また、動物実験に関しては、鹿児島大学に異動したことにより、動物研究が行いやすくなることが期待されたが、鹿児島大学医学部内にある動物実感施設の建て替え計画が始まり、動物実験研究が行えない状況にあり、動物実験施設が新築されるまで待つ必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究としては、以下の2つの前向き横断研究と前向き縦断観察研究を鹿児島大学病院で行う。急性心筋梗塞における口腔細菌叢と腸内細菌叢のクロストークともに炎症性サイトカインや活性化マクロファージの指標である可溶性葉酸受容体β(FRβ)や血管機能との関連を横断的研究で検討し、動脈硬化との関連を明らかにする。さらに、急性心筋梗塞患者において歯周病治療や腸整剤投与による治療を行った患者では、9か月後に歯周病菌と腸内細菌叢検査、冠動脈造影検査、血管機能検査、炎症性サイトカインや可溶性FR-βを再測定して治療の効果を前向き研究で検討する。また、歯周病の検査は鹿児島大学病院顎顔面外科に依頼して行うこととした。なお、急性心筋梗塞患者の症例数が足りない場合には、鹿児島市立病院にても倫理委員会での承認後に同様のプロトコールで研究することとする。 動物実験に関しては、他の動物実験研究施設での施行も検討したが、人材確保など研究費の面で困難であり、鹿児島大学動物実験研究室の新築開設を待って実験を開始することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は、上記の状況で臨床研究と動物実験が大きく遅れたが、今年度の交付金も合わせて以下のように使用予定である。口腔細菌叢と腸内細菌叢の検査はビケンに依頼予定で、唾液から得られる口腔内細菌叢と便から得られる腸内細菌叢の検査に1件体当たり2万円の費用が見積もられており、先ずは50検体提出予定としている。その他、可溶性FRβ、IL-1、IL-6、IL-8、TNF-α、TGF-β、trimethylamine N-oxide(TMAO濃度)などの採血バイオマーカーを測定するキットや試薬も購入する。
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