研究課題/領域番号 |
20K08477
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宮田 昌明 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00347113)
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研究分担者 |
池田 義之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (00573023)
大石 充 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50335345)
桶谷 直也 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (70598010)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 急性心筋梗塞 / 歯周病 / 口腔内細菌叢 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠動脈疾患で冠動脈形成術を施行した患者54名において、歯科医による歯磨きや歯周病ケアなどの口腔ケアを8か月間実施し、発症直後と8か月後の歯周病などの口腔内状態と血管内皮機能との関連を検討した前向き研究の結果をまとめ、論文投稿した。 血管内皮機能は、正中動脈を5分駆血後の血流再開時の血流依存性血管拡張反応による血管径の変化を超音波検査で測定する%FMDにて評価した。口腔内状態は、歯科医により、口腔内清掃状態を示す指数(plaque control record: PCR)、歯周ポケット深度指数(periodontal pocket depth: PPD)、プロービング中の歯肉からの出血(bleeding on probing: BOP)にて評価した。その結果、全54例では、口腔ケア8か月前後で口腔内状態や%FMDは有意に変化しなかった。しかし、歯周ポケット6mm以上群(25名)と歯周ポケット5mm以下群(29名)とに分けて検討した結果、歯周ポケット6mm以上群は5mm以下群と比較し、8か月後の%FMDは有意に低く(FMD: 歯周ポケット6mm以上群 vs. 5mm以下群:3.72±1.92% vs. 5.51±2.81%, p = 0.02)、内皮機能が増悪する傾向がみられた(ΔFMD:-0.55±2.12% vs. 0.75±2.8 0%, p = 0.06)。以上の結果から、口腔ケアを行ったにもかかわらず、歯周ポケット6mm以上重症歯周病患者では8か月後の血管内皮機能が増悪することが示唆された。 また、急性心筋梗塞における口腔細菌叢と腸内細菌叢のクロストークを検討し、動脈硬化との関連を明らかにする臨床研究に関しては、12名の入院時の唾液と便を採取し、ビケンに検体を送付し、遺伝子解析による口腔細菌叢と腸内細菌叢のクロストークを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は、研究申請書作成時は鹿児島市立病院に勤務していたが、2020年4月に鹿児島市立病院から鹿児島大学医学部保健学科に異動になり、研究は遂行しやすい環境になり、急性心筋梗塞患者の口腔細菌叢と腸内細菌叢のクロストークの研究を行うべく、鹿児島大学の倫理委員会に研究申請して、承認された。しかし、当初予定していた整腸剤であるミヤB細粒による腸内細菌叢介入試験に関しては、胃腸症状のない人への投与が問題になり、胃腸症状のある症例において、ミヤB細粒投与による変化をみる観察研究とした。また、歯周病は当初より、歯周病のある患者での歯周病治療希望者において歯周病治療を行い、歯周病治療を希望しない群との比較とした。 なお、新型コロナウイルス感染症の影響があり、当初は臨床研究そのものが困難な時期もあり、その後は、新型コロナ患者受け入れや院内感染などで急性心筋梗塞患者などの急患の受け入れを制限する時期もあり、急性心筋梗塞患者数が少なくなった。そのような困難な状況においても鹿児島大学病院心臓血管内科学の医師に加え、救急病棟やICUの看護師の協力も得て、急性心筋梗塞患者の唾液と便を採取して、遺伝子解析による口腔細菌叢と腸内細菌叢のクロストークの研究を遂行している。 また、動物実験に関しては、鹿児島大学に異動したことにより、動物研究が行いやすくなることが期待されたが、鹿児島大学医学部内にある動物実感施設の建て替え工事が始まり、動物実験研究が行えない状況にあり、動物実験施設が新築されるまで待つ必要が生じている。 一方、急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠動脈疾患で冠動脈形成術を施行した患者54名において、歯科医による歯磨きや歯周病ケアなどの口腔ケアを8か月間実施し、発症直後と8か月後の歯周病などの口腔内状態と血管内皮機能との関連を検討した前向き研究の結果をまとめ、論文投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
前述の如く、新型コロナウイルス感染症流行のため、臨床研究が実施しにくい状況にあるが、鹿児島大学病院心臓血管内科学の医師に加え、救急病棟やICUの看護師の協力も得て、以下の2つの前向き横断研究と前向き縦断観察研究を鹿児島大学病院で行う。 急性心筋梗塞における口腔細菌叢と腸内細菌叢のクロストークともに炎症性サイトカインや活性化マクロファージの指標である可溶性葉酸受容体β(FRβ)や血管機能との関連を横断的研究で検討し、動脈硬化との関連を明らかにする。 さらに、急性心筋梗塞患者において歯周病治療や腸整剤投与による治療を行った患者では、9か月後に歯周病菌と腸内細菌叢検査、冠動脈造影検査、血管機能検査、炎症性サイトカインや可溶性FR-βを再測定して治療の効果を前向き研究で検討する。 また、歯周病の検査は鹿児島大学病院顎顔面外科に依頼して行うこととした。なお、急性心筋梗塞患者の症例数が足りない場合には、鹿児島市立病院にても倫理委員会での承認後に同様のプロトコールで研究することとする。 動物実験に関しては、他の動物実験研究施設での施行も検討したが、人材確保など研究費の面で困難であり、鹿児島大学動物実験研究室の新築開設を待って実験を開始するよていである。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までは、上記の状況で臨床研究と動物実験が遅れたが、今年度の交付金も合わせて以下のように使用予定である。口腔細菌叢と腸内細菌叢の検査はビケンに依頼し、唾液から得られる口腔内細菌叢と便から得られる腸内細菌叢の検査に1件体当たり2万円の費用が見積もられており、先ずは50検体提出予定とし、唾液と便の検体が出たところでビケンに郵送している。 その他、可溶性FRβ、IL-1、IL-6、IL-8、TNF-α、TGF-β、trimethylamine N-oxide(TMAO濃度)などの採血バイオマーカーを測定するキットや試薬も購入する。
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