研究課題/領域番号 |
20K08481
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
安川 秀雄 久留米大学, 医学部, 准教授 (60289361)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心筋傷害ストレス / 心筋リモデリング / 線維芽細胞 / STAT3 / SOCS3 |
研究実績の概要 |
線維芽細胞特異的SOCS3-KOノックアウトマウス(SOCS3-fibKO)の作成 STAT3-floxマウスとタモキシフェン誘導性Periostin Creマウスをかけ合わせ、タモキシフェンを含む食餌を2週間投与し、SOCS3-fibKOマウスを作成した。8週齢のSOCS3-fibKOマウスの心臓のHE染色とシリウスレッド染色を作成し、線維芽細胞特異的にSOCS3が欠失したマウスの心臓の組織学的評価を行った、野生型マウスと比較し、心肥大や線維化などの組織学的に明らかな違いは認めなかった。心エコーの評価においても、野生型マウスと比較し、心肥大や心収縮能など明らかな差は認めなかった。次に、SOCS3-fibKOマウスに冠動脈左前下降枝を結紮することにより恒久的心筋梗塞を作成した。HE染色では、SOCS3-fibKOマウスにおいて、梗塞巣の残存心筋の面積が高い傾向を認めた。また、シリウスレッド染色において、梗塞巣の心室壁の厚さがSOCS3-fibKOマウスにおいて高い傾向を認めた。これらの結果は、恒久的心筋梗塞モデルにおいて、SOCS3欠失に伴う線維芽細胞のSTAT3経路が活性化し、急性虚血に対する心筋細胞の生存が促進している可能性を示している。この機序を明らかにすることによって、線維芽細胞のSTAT3/ SOCS3系が急性心筋梗塞の新たな治療標的と期待される。SOCS3-fibKOマウスにおける急性虚血に対する心筋細胞の生存が促進の機序として、線維芽細胞からの心筋生存を促進するサイトカインなどの分泌が増加していることや、血管新生の増加に伴う虚血耐性の機序などが推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STAT3-floxマウスとタモキシフェン誘導性Periostin Creマウスをかけ合わせ、SOCS3-fibKOマウスにタモキシフェンを投与し、SOCS3-fibKOマウスを作成できている。虚血や圧負荷などの心筋障害ストレスをかけない定常状態では、SOCS3-fibKOマウスにおいて、組織学的な異常や心肥大・心機能低下などの生理学的な異常は観察されなかった。SOCS3-fibKOマウスに恒久的心筋梗塞モデルを作成し、梗塞巣の減少と梗塞心筋の梗塞拡大の減少を示唆する所見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
SOCS3-fibKOマウスにおける急性虚血に対する心筋細胞の生存促進の機序について解析を進める。STAT3の免疫染色を行い、恒久的心筋梗塞モデルにおいて、心エコーによる心機能解析、ウエスタンブロットによるシグナルの活性化(STAT3, AKT, ERK1/2)、サイトカイン、アポトーシス関連遺伝子の発現をコントロールマウスと比較評価する。ANF, βMHCなどの心不全マーカーをreal-time PCRで解析しコントロールマウスと比較評価する。また、マウスより心筋線維化細胞株を樹立し、サイトカイン刺激によるSTAT3の活性化とSOCS3の発現をウエスタンブロットとreal-time PCRで明らかにする。また、real-time PCRアレイ解析を行い、サイトカイン、アポトーシス関連遺伝子の発現をコントロールマウスと比較評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度用いた、動物実験に必要な試薬、抗体や染色キットなどの消耗品は研究室で共有できるものや、前年度の残りで代用することができた。また、学会発表も検討していたが本期間中には見送ったため次年度使用額が生じた。 次年度の使用は、実験器具や試薬の購入費用、学会発表の投稿料などにあてる予定としている。
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